プロローグ ページ2
〜Aside〜
私は、つい数日前に"死んだ"。別に、寿命が来たとか自分で命を断ったとかでは決してない。そもそも、命を捨てる意味が無い。
……私の死因は、飲酒運転による交通事故だ。まぁ、たまたま不幸な日だったと言うべき所か。
私は、その日夕飯の買い出しの帰りに青になった横断歩道を歩いていた。そこまでは、いつもと変わらず普通だった。
だが、そこからが私の日常を大きく変える運命となった。私が、歩道を重い荷物を持って歩いていると音がしたのだ。
其れは、聞き覚えのある車の音だった。別に、そこは私も気にしていなかった。……だが、右隣から聞こえくる車の音は少し可笑しかった。
何が、可笑しいかと聞かれれば良く覚えている。……私が、歩道を渡っているのに"止まる"気配が無かったのだ。
スピードを落とすなら、音が静かになる筈なのに音はそのまま私の耳に聞こえていた。……まるで、無人の車が突っ込んでくるような雰囲気で。
私は、少し嫌な予感がしながらも右隣を向いた。……すると、どうだろう？もう、目の前に大型トラックが迫っていた。
その時の私は、恐怖よりも驚きの方が強かった気がする。何で、コッチに突っ込んでくるのかが不思議で堪らなかった。
……が、私が慌てて運転席を見るとハンドルを枕に俯きがちに眠っている運転手と窓に空のお酒の缶が見えた。
そこで、私は悟ってしまった。嗚呼、此れは"飲酒運転"かと。ほんのり、少し赤くなっている運転手の頬が見えそう確信した。
だが、逃げると言う発想はその時には既に閉ざされていた。……もう、逃げる余地すら無かったからだ。
私は、受け身だけでも取ろうと袋を地面に落とし腕を顔の前にクロスして無駄だと思ったが受け身をとった。
……そして、次の瞬間。私の体は、まるでボールのようにトラックに撥ねられた。空中に浮いている、時間が長く感じられた。
だが、次にはまるで何処ぞの漫画かライトノベルのような展開の如く私はコンクリートの地面とこんにちわしてしまった。
思い切り、叩き付けられた体が酷く軋んだように痛む。まさに、鈍痛とはコレのことを指すのでは無いかと私は思った。
すると、遠くで誰かの悲鳴が聞こえた。体から、血液が溢れ出ていくのが分かる。段々と、体の感覚も意識も朦朧としてきた。
そして、体は死一直線みたいで体温がスーッと引いて冷えていくのが自分でも分かった……。
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作者名：千本桜 | 作成日時：2019年6月14日 0時
