24話 パッヘルベル家当主 ページ43
「お嬢、苦しくないですか?」
「リンちゃんご飯残さないでよ〜体調悪いの?」
「お嬢髪が崩れてきてます…!」
「リンちゃん」
「お嬢」
「ちょっと2人ともうるさい!集中してるんだから静かにしてちょうだいよ」
任命式当日、屋敷には3人しかいないのに朝からうるさく忙しい。私よりも使用人達の方が気合入ってるって、どういう事よ…。
鏡に映るのは母から授けられたあのドレスを身に纏った私。なんだか、胸がキュッと締め付けられる。
私も人間、今ものすごく緊張してて胃の中のものが逆流しそう。2人とも心配してくれるのはありがたいんだけど、凄くプレッシャーになるのよ。
「ふぅぅ……んくぅうぅうう…っ!!」
「お嬢…?」
「リンちゃんも緊張するんだねぇ」
するに決まってんじゃないのよ。もう少しで城からの遣いが来る。もうそこから始まってる。
…落ち着け……私なら大丈夫よ。きっと。
ふと窓の外を見れば使いの人らしき姿が見えた。
「……来た。…よし……行くわよ」
馬車の中で、2人が今までにないくらいシーンとしていて、緊張してるのは2人も同じなのだと分かった。
緊張も、不安も、喜びも……これからも分け合って生きていくわ。
城に近づくにつれ、何度か見た事のある貴族たちの姿が見られた。
緊張が高まるだけなので窓の外を見るのはやめようと思う。母のドレスの裾を握りしめる。
これから、正式に私がこの家を引き継ぐのね…
握りしめた手に、レイヴィスの手とハインツの手が重なる。
「…お嬢、俺達もいることをお忘れなく」
「堂々としてなよ、リンちゃんらしくさ」
「…えぇ、そうね。私らしく……
ありがとう…さぁ、着いたわ。行きましょ」
城の正門の前で止まる馬車。降りれば沢山の人が道を作っていた。ここを通れと言わんばかりに。
その中には見知った顔がいくつか。手を振っているので小さく微笑んだ。
また、会場で会いましょう。そんな意味を込めて。
「…パッヘルベル様、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
城の使用人らしき人について行く。
最終準備、と言ったところね。
「では、お嬢。あなたの勇姿を見届けますよ」
「えぇ、期待しててちょうだいね」
レイヴィスとハインツに笑いかけ、二人と別れた。
式の始まりまで___
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クロスてゃん - ありがとうございますぅぅぅ!アルネの事件簿と気づいてガチ泣きしました…本当に嬉しいです更新頑張ってくださいね! (2021年11月23日 23時) (レス) id: c934f9389d (このIDを非表示/違反報告)
??? - この小説なんなん? まじ泣きしてしまうわ (2021年10月3日 20時) (レス) @page27 id: 2651f7c57d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - この使用人たちの名前。主人公の名前。家が大火事。………おっとぉ??? (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - もし違ったら失礼なのですが。この小説の使用人たちの名前って、某超絶イケメンの最凶の吸血鬼エビリィ!ブラッティ!ノインテーター!!のお方とあの触覚が愛らしい吸血鬼マニアちゃんとその他いっぱいの人気推理ゲームじゃないすかぁ!何ですかこれ、素敵です!! (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - そうだ、名前変換で気付かなかったんだ。この主役、"リン"ちゃんだ。 (2020年8月2日 18時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年4月2日 10時