カシスオレンジ『樋口一葉』※櫻子さんリクエスト ページ19
「かんぱぁい!!」
安い酒屋に響く女二人の声。金髪の女は髪を解き、発泡酒。黒髪の女は紫と黄色のグラデーションを描く酒を持っていた。
「A先輩、カシオレですか?」
「ああ、うん。余り強い訳じゃなくて……」
「はぁ、可愛らしいですよねぇ……私だって、可愛らしさの欠片さえあれば!!」
金の女はジョッキを勢い良く煽り、半分まで飲み干した。黒の女はそれを微笑ましげに見守り、自分のグラスの中身をマドラーで掻き回す。紫と黄色が混ざり合う。
「ぷはぁ!!人虎ぉおおお!!!!よくも私の先輩にぃいいい!」
ダンっ!と強めに叩きつけられたジョッキ。黒が目を丸くし金を見詰めれば、直ぐに本人は突っ伏してしまう。
「私も見て下さいよぉ〜……」
「伝わってると思うけどねぇ……」
クルクルと回るマドラー。黒い女の優しげな笑顔。金の女はもう一人に目線だけを上げる。
「そう言えば、先輩は中原幹部とお付き合いなされてますよね」
「ん?そうだね」
「『そうだね』って……随分と余裕ですね」
金の女が体を起こし、ジョッキに口を付ける。黒の女もチビりチビりと、口を付けて飲んでいく。店員が注文された料理を置いていく。
「ごゆっくりどうぞ」
「はぁい。……で、何の話だっけ?」
「いえ、不安になったりしないんですか?って……」
金の女が首を傾げて問いかける。黒の女は控えめに笑ってから、金の女に視線を遣る。手にあるグラスが、カラリと音を立てた。
「不安もあるけど、それを打ち消す様に尽くしてくれる人だからなぁ……」
「良いなぁ〜!狡いですー!」
金の女が叫ぶ。気を許せる相手だからだろう。
「芥川君は不器用なだけだよ」
「本当ですか!?」
黒の女が静かに告げると、金の女は目を輝かせて詰め寄る。余裕な黒も、流石にその勢いに後退り。
「……って、私は思ってるけどね……?」
「何でわかるんですかぁ!」
「年の功」
サラリと躱すその姿は、年齢相応。黒の女は、多少歳を食っていた。軽いベルの音が店の入口から聞こえる。
女二人が目を向ければ、其処には話題の男が二人。黒の女が男達に向けて手を振った。
「もうやっているのか……」
「先輩!お待ちしていた方がよろしかったでしょうか!?」
金の女と黒の男が隣に座る。帽子の男は黒の女の隣へ滑り込んだ。
「お先に頂いてまーす。中原幹部の奢りで♡」
「勘定は俺かよ……ッたく、手前には適わねェな」
黒の女は額を軽く小突かれる。さぁ、夜は長くなりそうだ。
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いちご(プロフ) - ミラから来たぞおおおぉ! に、しても評価凄いですね!Σ(゚ロ゚;) (2020年6月21日 14時) (レス) id: 3cbabf2902 (このIDを非表示/違反報告)
モフ子 - 道化さん» 全然OKです。後見させてもらいました、兎に角好き(語彙力Maxです。 (2019年8月4日 17時) (レス) id: 7dc88695a1 (このIDを非表示/違反報告)
道化(プロフ) - 書かせて頂きました!お仕事疲れとの事なので、ちょっと絡めたお話を。ゴーゴリ「頑張った子には、ご褒美がいるよね!私は分かっているのさ!」 (2019年8月2日 18時) (レス) id: 915e79c273 (このIDを非表示/違反報告)
道化(プロフ) - モフ子さん» 了解しました!リクエスト内容は、シリーズ最新作の「恋は下心」の方に投稿させて頂きますが、大丈夫でしょうか? (2019年8月2日 18時) (レス) id: 915e79c273 (このIDを非表示/違反報告)
モフ子 - リクエストしても宜しいでしょうか?天人五衰のゴーゴリ君っていいですか?シチュエーションは何でも構わないのでお願いします!仕事帰りに癒されたい!どうか私の我儘を聞いて下され (2019年8月2日 11時) (レス) id: 7dc88695a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:jazz | 作成日時:2019年4月26日 19時