闇の中の白【五条悟】

13.特訓 ページ14

｢ほんとお前って、術式だよりの戦闘繰り返してたんだな。まだ猿の方が動ける｣



地面に這いつくばっている私をゴミを見るような目で見下ろす五条先輩の視線が突き刺さる。


この前の優しさはどこへやら


まじで、鬼。怖い。帰りたい。



｢そんなんだと死ぬよ？
ていうかもういっその事呪術師やめちゃえば？｣



辞めないし、死にたくないし。

痛む足を踏ん張って立ち上がれば



｢根性だけは認めるけど＿＿＿根性じゃ勝てないんだよッ!!｣



先輩の拳が右頬ギリギリを掠める



あっぶな



｢一撃避けただけで気を抜くなって｣


回し蹴りが腹部にあたって
身体が数メートル吹っ飛んだ


蹴られる間際に腹部に呪力を貯めて
ダメージは軽減できたけど


着地ミスっておしり痛い…うう。



｢集中力切れてるし、もう今日はここまでな｣



ほら、立てるか？


さっきまで鬼の形相で
腹蹴っ飛ばして来たくせに


今度は柔らかい表情で手を差し伸べてくる



……本当に同一人物？



そう思いつつ手を借りて立ち上がって
先輩と並んで寮に向かって歩いていたら、



｢亀並のスピードだけど、始めた頃よりは動けるようになってるから、頑張れよ｣



私の方を見ることなく
あくびしながら先輩はそう言った。



……疲れてるのかな



｢先輩、眠れてますか？｣


｢え？何が｣


｢だって、先輩1級だし、私たちよりも任務多いし、私の相手なんかしてる暇ないんじゃないかなって…｣


｢はは、もうしかして俺の心配してくれてる？｣



少し迷って

はい、と答えようとしたら



｢お前はまず自分の心配するべきだろ｣



くっそ腹立つ顔で煽ってきたから
頷かなくて良かったと思った。



｢俺最強だからなー、心配とかされたの何年ぶり？｣



……。



｢俺の事心配するくらいなんだから、相当強いんだろうなぁ、Aは。｣



うざ。



｢術式順転、溺｣


｢残念。酸素濃度下げても、大気と俺の間には無限があるから、届きませーん｣


｢無限ってなんなんですか｣


｢…｣


先輩もよく
分からないんだ、ふーん。


｢てかさ、話変わるけど、Aのその色素欠乏って天与呪縛？｣


｢…夜蛾先生はそんなこと言ってた気がします｣


｢だよな。てことは、何かしらステータス付与がある訳じゃん。身体能力が上がってるわけでもねーし…なんなんだろうな｣



そんなの私に聞かれても…

六眼を持ってる先輩が分からないなら



｢私にも分かりませんよ｣

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