人生三度目の転生先はBORUTOの世界でした【アカデミー編】

第30話 ページ32

誰かの声が聞こえてくる。
優しい。穏やかな声でとても安心する。
このまま、この声を聞きながら眠りについていたい。
と思っても、1度眠気が治まると瞼は自然に開くもので。

｢おはよう、A｣
｢お、は……え？｣

目を覚ましたら目の前に、校長ことイルカ先生の姿が。
驚きすぎて固まってしまったが、目の前で手を振られて思考を元に戻す。
何故ここにと言おうと思ったが、窓から綺麗な夕焼けの光が教室を照らしている。
おぅふ……なるほど、ずっと寝てたってわけ。

｢大丈夫か？｣
｢あ、はい。ありがとうございます｣

イルカ先生は優しい。私がアニメや漫画で見てた時からずっと。
それは今も変わらない、優しくて尊敬される偉大な先生だ。
というか……なぜそんな先生が私の前にいるのか。

｢なぁA……｣
｢はい｣
｢一楽行こうか｣
｢は！？｣

そんなことを言われた数10分後。
何故かイルカ先生と一楽にいた。
本当になんでこうなった？
イルカ先生のことだ、私の異変に気づいてさり気なく誘ったのだろう。
優しいや、お人好しとしか言えない行動だ。

｢何頼む？｣
｢えっ、あ、お、お任せします｣
｢じゃぁ、味噌チャーシュー2つ｣

一楽に行こうとは思わなかったから、初の一楽で少しソワソワする。
いや、何せ他の店でご飯食べることが多いだけなのだが……。
チラッとイルカ先生の方を見れば、すぐに視線が合う。

｢どうした？｣
｢いや、あの……なんで｣
｢あぁ、お詫びだと思ってくれ｣
｢お、お詫び？｣

イルカ先生に何かされたっけ？ と思考を巡らせてると、隣から声が聞こえた。
この間のミラーの件で心を痛めたんじゃないかと、心配になったらしい。
子供の何気ない一言や、大人の態度で人の心は簡単にボロボロになるから、とのことだ。

｢俺は干渉してないんだけど……まぁ、お節介かな｣

あぁ、本当にこの人はどこまでも優しくてどこまでもお節介だ。
自分のことより他人のことを優先してしまう。
他人の心の傷や他人の心に寄り添うのが誰よりもうまい。
だから、慕われる。憧れられる。
本当にすごい人だ。こんな人になりたかった。

｢大丈夫ですよ。イルカ先生。私、気にしてません。強いんで｣
｢＿＿＿＿そうか｣

力強く微笑みながらそう言えば、イルカ先生は驚いた顔をしたあと慈愛の籠った目で私を見つめた。
こんなに優しい先生に見守られていた7代目が羨ましい。
だからなのかイルカ先生と食べた一楽のラーメンは味噌ラーメンの中で1番美味しかった。

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