さん ページ3
その日の夜。
一人でチャンネルを無意味に連打していると、後ろから声がかかった。
声の主はテーブルの上のビニール袋を指さしている。
「これ、治がお前にってお菓子置いてったけど」
「え?どなた?」
「今日来てたやつ」
そう言われて銀髪の後頭部を思い出す。
うちに着く前に私がいることを知って、近くのコンビニで手土産を買ってきてくれたらしい。優しい。
……そしてちょっぴり罪悪感。私は滅茶苦茶避けていたのに。
「またどうせ明日も来るだろうしお礼言っとけよ」
「うん、ありがとう」
「俺にじゃねーよ」
兄はそう言ったが、袋の中に入っていたのはなめらかプリンとチョコと水。私の非常食ばかりだ。
絶対私の好みを教えたに違いない。チューペットの借りはなかったことにしておこう。
***
同じ剣道部の友達が詰め寄ってきたのは、ホームルームが終わったあとのこと。
「Aちゃんのお兄ちゃんバレー部なんでしょ〜!?」
「顔が近い」
「一緒に見に行こ〜〜や〜〜!」
「全然いいんだけど距離感おかしい」
稲荷崎高校のバレー部は強い(らしい)。
それだけでなく、イケメン揃いと言われているためファンが多い。例に漏れず友達もそうだ。
ちなみに私はブラコンだと思われたくないので行ったことはない。いやイケメンは気になるけど!さぁ!
「宮先輩かっこいいんよ〜〜〜」
「わかる」
「いやAちゃん知らないやろ!?適当に返事したな!?強制連行や!!!」
私はリュックを引っ張られ、引き摺られるようにして後ろ向きで歩き始めた。
せっかくのオフなのになんてザマだ。
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作者名:- | 作成日時:2020年5月19日 15時