【夏油傑】初めまして、結婚して欲しい

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傑が部屋で着替えている間、
彼が持って帰ってきた物を手に取って
見ていた。




「結婚式場…」




式場選びのパンフレット。
衣装や料理、装花、
ブーケ、ウエディングケーキ。

するかも分からないのに、
なんなら、政略結婚には結婚式なんて
必要無いかもしれないけど。


少し、想像してドキドキして憧れた。





「したい？Aは」




いつの間にか背後に立っていた傑が
私にそういった。
少し驚いて、テーブルの上に
パンフレットを戻した。




「あっごめんなさい、勝手に見て」

「大丈夫、君に見せようと思ってたから。

それで、どうしたい？」

「…私達は形だけだから、
別に結婚式は必要ないんじゃない…かな…」




したい。
仮初でもいいから、その雰囲気を
一生の思い出に取っておきたい。
でも、傑はパンフレットを戻した
私の手を掴んだ。




「嘘はいいから。
私はAがどうしたいか聞きたいんだ」

「え」




嘘、て気付いてた。
どうして、て思いはしたけど。
本当のことを言ってもいいのか。
面倒な女、て思われてたらどうしよう。




「傑と結婚式、し…たいよ」



震える唇は本当にか細い声しか出なかった。
彼はうん、と返事をして微笑んだ。




「私もAがいいなら

そうしたいと思っていたんだ」




そんなことを言われて、優しく抱擁するから。
愛して欲しい、と言っていた我儘な心は
単純にも満たされて、
たとえこれが優しい嘘だとしてもいいと思った。




.作者
じれってぇな、やらしいことするんだろ？()

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