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第二十二話 ページ22

嘘だ。信じられなくて目を擦る。
先生が目の前にいるなんて……。

「あんま目、擦るんじゃないぞ」

そう言って先生は私の手を優しく掴む。
その手はとても温かかった。
嬉しくて、それと同時に恥ずかしくてきゅっと目を瞑る。
ああ、やっぱり私は先生のことが好きなのだな、と思った。

とくとくと心臓が音を立てる。
この時間がいつまでも続けばいいのに、と思ったのも束の間。

先生の手が離れていってしまう。
もう少しだけ、触れていてほしかったなんて。


「今日は来るのが早いんだな」

鍵開けに来たら、(人1)がいてびっくりした。
なんて、先生は笑いながら教室の鍵穴に鍵を差し込む。
ガチャリという音が聞こえて、教室の扉が開いた。

「どうぞ」

と先生は言って、私が教室に入るのを待つ。
だけど私は入らない。
地面に足が縫い付けられたかのように、全く動かない。
先生はそんな私を見て、不思議そうに首を傾げた。


「どうした?」

「…先生に、会いたかったから」

とても小さな声で、先生に言う。
だけどその声は静かな廊下に響いた。
先生の目を見続ける。
先生は何て言うだろうか。

私たちの間に、冷たい空気が流れ込む。
体が寒さに震える。けど、今はそんなことを気にしている余裕などとてもなかった。

ただずっと先生を見つめて、返事を待つ。
先生も私から目を逸らさない。
じっと見つめ合っていると、とうとう先生が口を開いた。

「俺も……会いたかった」

「……っ!」

嬉しいと思ったのも一瞬。
次の瞬間にはショックを受けることになる。

「生徒たちに会えないのって辛いな」

先生は笑いながらそう言った。
私は「そういう意味かぁ……」と項垂れる。

「うん? どういう意味?」

と、先生はわけが分からなそうに私を見てくるのだけど、もう何も言う気にもなれず、私はただ黙っているだけだった。

やっぱり、先生は私のことを生徒としか思ってないか。
少し……いや、大分ショックなのだが、でもそれは仕方のないことなのだろうか。

「まぁ、今日からまた学校頑張ろうな! (人1)も二年生になるからな」

じゃあまた後で、と言って先生はほかの教室を開けに行ってしまった。
しばらく先生の背中を見続けたが、「何やってんだろ」と呟いて教室に入った。

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作者名:りつ(みずりんろーる) | 作成日時:2018年11月26日 17時

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