風柱、拾いました【不死川実弥】

あれが夢でも現でも ページ39

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どれだけの時間、べそべそと泣いたか知れない。


泣いて泣いて、泣き疲れて。



座っていることすら嫌になり、もう一度ベッドに潜り込んで、またひとしきり泣いた。


頭が痛くなって、声は掠れて。


そうして私は駄々をこねた子供のように、そのまま眠ってしまったらしい。



…………次に目を覚ました時、スマホの時刻は更に進み、昼になっていた。














(………喉、乾いた……)



痛む頭とまだ熱を持つ目元に少々うんざりしながら、とりあえずはベッドを抜け出し。


そのままバスルームへと向かい、冷水で無造作に顔を洗った。


鏡に映る顔は案の定、どこもかしこもパンパンに腫れていて。

『ブサイク』と声に出して小さく笑う。



ほんの少しだけすっきりしたような気になれば、次に覚えるのは喉の乾き。

冷蔵庫からペットボトルを取り出し、一気に中身をあおった。



『……ほんとに夢だったのかもしれないじゃん』



これだけ何の跡も残ってないんだから。
きっと私はずっと夢を見ていて、今、目覚めて。



むしろ、そう思いたかった。
だって楽しかったんだもの、本当に。すごく。



『もう二度と会えないんじゃなくて、最初から会ってもない、って思う方がさ………』



楽でしょ、と。
自分に言い聞かせるよう、わざと声に出して。

でも。



(………っ、やっぱ無理だあ……)



陽の光にキラキラ反射する、銀の髪も。

驚くと子供みたいに見開かれる、大きな瞳も。

私に呆れて眉を寄せた、渋い表情も。

おはぎを頬張り、嬉しそうに緩む口元も。



全部、全部が。
ずっと私が思い描いていた、風柱だったから。



『……忘れられるわけ、ないっ……』



言葉にしてしまえばまた、溢れそうになる感情。


ぐ、と飲み込み、ふとそこへ視線を投げた。

” 風柱が居る ” ＿＿＿＿＿その場所。



(………？)



「鬼滅の刃」と書かれた、黒い背表紙が並ぶ本棚。
一冊だけ、不自然にずれていることに気づく。



『あ……！』



それがあの17巻だと気づいた瞬間、私は本棚へと駆け寄り。

震えそうになる指先に力を込め、強く引き抜いた。


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「風柱、拾いました」→←2022年11月29日 7:30 am

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