《後編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

79 : 幸せだと言うのなら ページ40

side 宇髄天元






(もういいんだぞ、不死川)



お前らがまさに身命を賭して鬼は滅したんだから、これからはもう、1人の男として生きりゃいい。



(…………痣の寿命が、来るまではな)



鬼など居ない平和な世になったというのに、アイツらに残された時間は、せいぜいが4、5年らしい。



なあ、ようやくだぞ？


やっと普通の、人として当たり前の生活が送れるようになったらもう、終わりが見えちまってるって。



んなバカなことあるか。


コイツらのおかげで、鬼は居なくなったというのに。
















「はははっ………おーおーアイツら、幸せボケしたツラしやがって」



祝言は和やかに滞りなく進み、主役の2人からはずっと、笑顔が絶えず。


そんな感想を思わず漏らせば、傍らの後輩達も、思い思いに口を開く。



「不死川さんて、あんな風に笑うんですね！ やっぱり笑顔は玄弥とよく似てるなあ」


「う、う、うあぁぁぁん!! Aさん綺麗すぎじゃない?! でも何で相手が風のオッサンなのォォォォォ!!!」


「るっせえ紋逸!! んなことよりオレは腹減った！ 早くごちそう食わせろ！」



輝利哉様の一声があれば、元・鬼殺隊やその関係者は喜んで集まる。


だから今日は、多くのヤツらがお祝いに駆けつけていた。



ただこのガキ共は要注意だ。

せっかくの祝言、邪魔するワケにゃいかねえからな。



「いいかお前ら。炭治郎は、あんま不死川に絡むな。伊之助、メシはもう少し我慢だ。善逸はとりあえず声出すんじゃねえ」


「なんでえぇぇぇぇぇぇ?!」


「だから声出すな、っつってんだろ」



何か尋常小学校のセンセーの気分だわ。


だがこの祝言をブチ壊さねえためにも、その役はオレ様が引き受けてやろうと思う。



(………良い顔してんよ、2人とも)



幸せが、全身から溢れてる。


痣の寿命なんざ、んなモン大したこっちゃねえって、思える程に。



(アイツらが幸せだって言うなら………オレらはそれを、盛大に祝ってやるだけだ)





……………そう、だから。



「結婚おめでとう!! 不死川、 A!!」



宣誓を終え、こちらへと礼をした2人に向かってそんな声をかける。


アイツらは互いに一度微笑み合ってから、「ありがとう」と揃って、破顔してみせたのだった。



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