【あんスタ】幸せ記録【逆先夏目】 (ページ9)

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7枚目　青葉の散りゆくページ9

「夏目くん」

「放っておいテ」

　あれから何日が経ったのだろうか。もしかしたら、まだ一日も経っていないのかもしれない。逆に、もう何日も何日も経っているのかもしれない。

　ボクの尊敬する、大好きな師匠が死んだ。

　勿論これは比喩だ。正確には、あの『五奇人としての日々樹渉』が死んだ。

　その日から、ボクは秘密の部屋へ閉じ籠った。

　不定期に誰かに呼ばれる。それは少し気まずそうな零兄さんだったり、何かを決心したような、それでもって少しかすれた声の宗兄さんだったり。

　あるときは、師匠でもない、ただの渉兄さんがいた。

　これは誰？兄さんじゃない。兄さんたちのような威厳のある声でも不思議な声でもない。

「俺です～……あの、ちょっと救出しにきてくれませんか～？」

　……あのモジャモジャ。

　久しぶりに、そんな人間らしい感情がよみがえる。

「今、そんな気分じゃなイ」

「そんなこと言わずに～……俺、力結構あるんですけど、これ辛いです！」

「嫌味かナ？ボク、センパイより腕力ないと思うけド」

「そういう問題でもないんですよ～……ひぇぇ……」

　そっと扉を開け、隙間から覗き見た。

(何アレ)

　机に置いてきぼりにされた本体(メガネ)(命名:零兄さん)、本の山、それに押し潰されたセンパイ。

「あっ、夏目くん！見てますね！？ちょっと今瞳っぽいものが光りました！」

「頑張っテ」

「ちょ！？」

　パタンと扉を閉じれば言葉とも言えない悲鳴。なんともまぁ愉快なセンパイなのだろう。今時珍しい人種だ。

　特に夢ノ咲では。

「浮かない顔をしているな、逆先」

「エッ、びっくりしタ……何？渉兄さん」

「渉兄さんではないぞ」

「エ？」

　出てきた場所的に反射的に渉兄さんと言ってしまったが、どうやら違うようだった。

　ボクにとっては、とても驚くような人物。そんな人と、目が合った。