【あんスタ】幸せ記録【逆先夏目】 (ページ16)

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14枚目　きっかけページ16

「部活とカ、何かしてるノ？」

　言いながら、ボクはカレーを一口、口に含む。

　美味しいことは美味しいのだがどこか物足りない味に少し顔をしかめ、またスプーンで一口分を掬った。

「……部でした」

「『でした』？」

「一応、受験生なのでもう引退してるんです」

　はらりと垂れてきた髪を耳にかけながらそちらを見ると、彼はふい、と目を逸らした。

　黒というには明るい髪色で、ふわふわとした短髪。

　その礼儀正しさはどこか違和感があって、普段はどんな立ち振舞いをしているのか少しだけ興味が湧いた。

　見たところ普通の中学生、といったところか。まぁ当たり前なんだろうけど。

＊

　ところで、何だろうかこのむさ苦しい空間は。

　答えは簡単。占い師の息子(ボク)と客人の息子(彼)の暇潰しの食事会である。

「ご馳走さまでした」

「ご馳走さまでしタ」

　ほぼ同時刻。二人揃って壁掛けの時計を見れば、まだほんの二十分ほどしか経っていない。

　暫しの沈黙。お互い顔を見合わせ、あははと乾いた笑いや苦笑いだかをしてみてもただ虚しいだけである。

「えっト……とりあえず出ようカ？」

「はい」

「奢るヨ」

　彼の声は聞こえないふりをしつつ、財布を鞄から出す。

「そこまでお金に困ってませんので……」

「年上が意地張りたいだけだから気にしなくていいんだヨ」

「とかいって後からたかってきたりしません？」

「用心深いネ。そんなことしないから安心しテ」

　店を出ればなんとなくひんやりとした空気が広がる。

「さーテ、何しようカ？」

「……」

　わざとらしく恋人みたいに腕を組んでみれば、やめてください訴えますよと案外低い声で返される。

　仕方なく離れると、じとりと半眼で睨まれた。

「まぁまぁ。折角だシ、なにもしないのもツマらないでショ？」

「なら一人でコサックダンスしてます」

「じゃあ横で這ってればいいのかナ」

　意味のわからない会話を交えながら、とりあえず歩く。

「うぉーきんぐうぉーきんぐ」

「冷めた目しといてキミ実は楽しんでるでショ……」

「walking」

「発音の問題じゃなくてネ……」

　どことなく、師匠たちに似た気配を感じた。