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第弐拾壱幕 ページ23

【手錠に繋がれ、手と手交わる】


条野採菊と夜凪Aの関わりは、末広鐵腸よりも深い関係とも云える。末広のように、幾度か甘味を回ったような仲ではない。

条野がAの捕獲担当であり、長年追い掛けられて来たのだ。無論、顔見知りであり。最も嫌う猟犬の人間だと断言できる。

そしてこの瞬間。初めてAの左腕に銀色に光る手錠が掛けられる。もう一方は条野の腕に掛けられた。思わず顔をしかめる。

『取っても良いんですよ』



「外しませんよ」



『……条野さんの馬鹿』



「何とでも仰れば良いんですよ、犯罪者」



今度ばかりは芥川も頭を抱えた。左手には手錠で繋がれた条野。右手には堅く手を握る末広。猟犬が二人共参謀を挟んでいる。

Aは敦を見つめるが、敦は二人のことを、猟犬という存在自体を知らない。急激に変わった状況に追い付けていないのだから。

「あ、あの……」



「おや?貴方は武装探偵社の……」



「え、知ってるんですか!?」



「資料で見たことがあるだけですが」



「御二人は一体……?」



「猟犬だ」



末広が敦の問いに答えるが、ちんぷんかんぷんとでも言うかのように首を傾ける。芥川は威嚇をしながら、条野を睨みつけた。

「猟犬……?」



「それも知らんのか、愚者め」



「お前はいちいち辛辣なんだよ!!」



「ふん、馬鹿な人虎に教えてやる前に……」



芥川は歩き出す。それには一同、首を傾げた。だが、有無を云わさない雰囲気(オーラ)に黙ってついて行く。反抗はしない。

着いた先はコンビニだ。買っていないことを察したのだろう。適当に籠に放り込む芥川に、敦も加勢し要らないものを戻していく。

猟犬の二人もお腹は空いていたのだろう。末広がAの手を離して、籠に握り飯と猪口(チョコ)と辛子を同じく放り込んだ。

「芥川、これは要らないだろ」



「む」



「なんで酒なんか入れるんだ……。確かお前、下戸だろ?太宰さんが云ってた」



「Aが飲むかな、と」



『あ!!私、鬼嫁が良い!!』



「気が合いますね」



『条野さんも御好きなんですか』



「はい、この日本酒が一番好きです。よく晩酌にして飲みますね」



『へぇ!!』



地味に日本酒噺(トーク)で盛り上がり、意気投合する二人の姿は異様だ。他人から見れば美男美女だが、手錠で繋がれているのだ。

「条野、富醂(プリン)がある……!!」



「一寸、無駄使いしないで下さいよ」



これから始まる五人の新たな生活。その幕開けとなるのが、この買い物だったりするのだが……。時は止まることなく、夕刻に近付く。

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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年10月18日 22時

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