第拾参幕 ページ15
【殺人の街とはなんぞやと】
とても安い街中の三階建ての一軒屋が破格の値段で買えた。その理由は簡単なことだ。事故物件、つまり誰かが死んだ家ということ。
『何故、こんなに事故物件が……』
「米花町は何かと事件が多いんだよ。他からは悪魔の町とか呼ばれてるね」
「そんなに起きやすいんですか……?」
「自 殺に強盗、殺人、ストーカー被害。迷宮入りの事件なんて幾千もあるよ」
穏やかな性格の店主は笑いながら、買った家の案内をしてくれている。魔都と名高いヨコハマといえど、この街には負けそうだ。
「事故物件じゃないのはほとんどないよ」
「僕等には関係のないことだ」
「でも、此処って連続殺人が起きた家なんだろ!?三人で住むから、まだ良いけど……」
「何を震えている人虎。死体を見るなど日常茶飯事なことだろう」
「死体は日常茶飯事ってほど見ないよ!!」
『死にかけはたくさん見るってこと?』
「……否定はできないですけど」
「何の話かは知らないけど、私はそろそろ行くよ。何かあったら連絡してね」
「あ、はい」
店主が去ると、余計に家の雰囲気が薄暗くなった気がする。まだ14時だから、家具や服の調達ができるだろう。幸運(ラッキー)だ。
『夕飯はコンビニで良い?』
「嗚呼。まずは部屋の割り振りだな」
「一階がリビングで……」
『二階はダイニングとかキッチンね』
「三階は個人の部屋だ。僕は一番奥の北の部屋にする。異論ないな」
『私は龍くんの隣の部屋で』
「僕はAさんの隣で」
「余った部屋は物置や書斎だな」
埃の積もった本棚をサッと、先程の店主がくれた叩きで叩く。敦は埃が舞った瞬間に思わず顔をしかめた。何とも古い埃だ。
『敦くん、塵取り』
「あ、はい!!」
『龍くんは雑巾掛けてね』
「仕方ない。……【羅生門】ッ!!」
外套の黒布が自然の現象とは全く異なる力でうねる。掃除一式の中から、歪んだ顔でバケツの中に突っ込む。ビチャリと濡れた。
そして手際よく、程好い力で絞られた雑巾は壁や床など隅々を拭いていく。Aは中也の異能を使うために、部屋の中央に立った。
「Aさん?」
『異能力【藤の箱庭 改 汚れちまつた悲しみに】』
置いてある本棚や照明を重力で浮かせば、黒布が伸ばされ雑巾がその隙間を縫う。敦は理解したのか、自分も箒と塵取りを構える。
そして降ってきた塵や埃を箒で掃いた。Aはひたすら自身の間合いを広げるのに集中して、家中の備え付け家具を浮かせる。
そして異能を用いた掃除は弱一時間で終えた。
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年10月18日 22時