ゼルトザーム屋敷の冒険【オリジナル】 (ページ32)

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第３２話　物売りのレナータ２ページ32

「ふーん！面白そうだね、アンタ達気に入った！」
「ところでレナータさん。ここはよろず屋なんですよね？屋敷の住人のティアナさんが、この店でペットボトルに入った水と黄色いゼラニウムの花を購入していると話していたのでラインナップが気になっているんですけれど」

　ルー君の言葉に、レナータさんはまたあのチェシャ猫みたいな笑い方をした。よくぞ聞いてくれました！とでも言わんばかりに胸を張っている。「凄い事を言うんだけどねえ」と彼女は自慢げに話し始めた。

「アタシの店では何でも買えちゃうんだよ！客人が欲しいと思ったものならなーんでもね！ペットボトル入りの水？お安い御用！黄色いゼラニウム？勿論オッケー！『飲料食料文房道具、娯楽品から仕事道具となんでもござれ！！』っていうキャッチコピーもあるんだよ！まあ今考えたんだけどさ」

　淀みなくミュージカル俳優のように言った後にハハハハ！！と快活に笑うレナータさん。このお店、品揃えが凄く豊富なんだろうなあ。……その割には店内はシンプルな内装だけど。

　この屋敷じゃなくて街の方で営めば大人気店になるのは間違いなしのはず、移転する気はないんですかね。ここでやるから良い！みたいな拘りがあるのかな。大人ってよく分からないなあ。

「ほんで、なんか買う物ある？」
「あの……ボールペンってありますか？」
「勿論！ボールペンは一本だよね、この値段だよ～」

　タブレットのメモ機能に手書きで書いたと思われる値段リストが貼られていた。えーとボールペンは一本……うっっわ安い！！破格の値段すぎる、こんなに安いボールペン見た事がない。え、商売になるんですかこれ！？この値段ならもっと安っぽい見た目のはずなのに、高級品のような立派な造りのボールペンを出されて更に困惑しちゃった。

　親切価格すぎる！！

　どうやら電子マネーの使用が可能のようなので、スマホを取り出してタッチした。うーん、時には厄介だけれどやっぱり文明の進歩に我々人類は助けられている気がする。

「ほい、毎度ありー！他にはなんか見ていくの？」
「いいえ、結構です」

　ルー君はレナータさんの言葉に被さる勢いで言い放つと、私の背中を押して無理矢理店を出て行く。グイグイと押されて、あっという間に廊下まで来てしまった。

「ねえ迷い人さん達、この屋敷にいる"もう一人のお客様"に気をつけなよ」

　先程よりも数段低く聞こえる声とは裏腹に、レナータさんの口調はこちらを嘲笑うかのように楽しく弾んでいた。