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第31話 物売りのレナータ1 ページ31

 ティアナさんの言っていた通り、件のお店は丁度上の階にあった。臙脂色のドアに"よろず屋"とどう見ても手書きで書かれた淡いオレンジ色のドアプレートがかかっている。

 どうやって入ろうかな……と、あぐねている私をよそにルー君はドアノブをガシッと掴むと遠慮なくドアを開けた。うわああああ計画が無さ過ぎるって!!

「いらっしゃーい、よろず屋へようこそ…………って、誰?」

 ハスキーな声が来客を喜んだかと思うと同時に正体不明の人間を見てシュルルと小さくなっていく。
 淡いオレンジ色のはね返った短い髪の毛、黒色の瞳を持つ猫のようにつった目。
 真っ黒なシャツに赤色の丈の短いジャケットを羽織って同じ色の細身のズボンを履いている。腰に地が金色で黒い蔦の刺繍を施された太いベルトを巻いている。
 目を細めてニコッと笑うその姿は本物の猫みたい。この人、何歳なんだろう?

「僕はルートヴィヒ・フェルカー、彼女はエラ・リースフェルト。保護者的な人と一緒に昨日の夜、
この屋敷に迷い込んできたんです」
「へえー! つまりお客様ってわけだね? アタシはレナータ・オフターディンガー。ここで勝手に店を営んでいるしがない物売りさ。ねえねえ、アンタ達は一体どこから来たの? 年はいくつ? 保護者的な人ってどんな人? その人って男? それとも女?」

 う、うわあ……よく喋る人だなあ……それに好奇心が凄く旺盛でなんでも知りたがっているみたい。息を吐く間も無く話しかけてくるから頭の中で理解して整理するのに少しばかり時間がかかりそう。でも、この人なんだか楽しそうだなあ……

「わ、私達はこの屋敷からそう遠くない場所から来たんです」
「保護者的な役割の人っていうのは勤め先の店長の事ですよ、ちなみにオッサン」

 本人が聞いていないからって、フリッツさんの事を堂々と「オッサン」って言ったよねルー君。万が一この発言がバレたらチョコレートバー没収されるかもしれないのに。

 レナータさんは私達の返答に満足したのかニヤッと妖しげに笑った。この笑顔、なんだかチェシャ猫みたい。

第32話 物売りのレナータ2→←第30話 淑女はゼラニウムと共に2



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ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» なるほど、ありがとうございます! (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» 確か、エラという名前には美しいという意味があったはずです。平凡な見た目でも芯の真っ直ぐな美しい子、というイメージで名付けました。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: 5f459e3a39 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 主人公のエラちゃんのお名前って可愛いですよね。この名前にしようと思ったきっかけは何ですか? (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» そこら辺もまだ語れません……今後に乞うご期待です! (2020年11月4日 10時) (レス) id: 9dfed805b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - そういえば思った事ですが、幽霊や心霊現象も含まれますか? (2020年11月4日 7時) (レス) id: ac128bc03f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:新藤緋色 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/homepageofSHS/  
作成日時:2020年3月29日 23時

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