ゼルトザーム屋敷の冒険【オリジナル】 (ページ3)

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第３話　フリッツページ3

　台所に戻ってきて、もう一度卵を割って油を引いたフライパンに落とす。火をつければ軽快な音ともに目玉焼きが焼けていくのが分かる。ふとダイニングテーブルの方を見れば、ルー君はまだ雪を眺めていた。確かに珍しいけれど、ルー君ってそんなに雪が好きだったんだ。

「ルー君」
「んあ？」

　気の抜けた返事に思わず微笑んじゃう。

「フリッツさん起こしてきて、もうすぐで朝ご飯できるから」
「分かった。店長ォー、店長起きてー」

　ルー君は階段を登って寝室まで起こしに行った。

　フリッツ・ハインツェさんは、私とルー君が勤めている果物屋さんの店長で、孤児院にいた私達を家族として向かえてくれた恩人。
　本当は「お父さん」って呼びたかったけれど"あの人"に対して使っていた言葉を彼には使いたくなかった。不倫した人に対して使っていた呼び方なんて彼に失礼だもん。だから私は"フリッツさん"って呼んでいる。遠慮しなくても良いんだぜ？って言うフリッツさんに事のあらましを伝えたら、それならエラが呼びたい方で良いよ。って言ってくれたんだ。

　ルー君は拾われた日からずっと"店長"って呼んでいる。何でそんな呼び方なの？って聞いたら「何となくだよ」って言われちゃった。フィーリングの問題だったのかなあ。

　少しして、ルー君と共にフリッツさんが起きてきた。起きたばかりだからボサボサの黒い髪、朱殷色の瞳を持つ切れ長の目はまだ眠いからか微睡んでいる。
　うーん、前から思っていたけれどフリッツさんって見た目じゃ実年齢分かんないよね。本人は「まだまだ若いぞ」って言っていたけれど、ルー君は「あの人すぐ疲れるしオッサンでしょ」って言っていたんだよね、今思えば凄く失礼じゃないかな、あの発言。

「おはようフリッツさん」
「おー、おはようエラ。朝飯ありがとうな」
「店長お酒臭ーい！また飲んでたでしょ、この飲んだくれ！」
「ハハハ、美味い酒だったからつい飲んじまった。悪かったな」

　……そうなんだよね、フリッツさんって良い人なんだけれど凄くお酒にだらしないの。ワインボトルを平気で一、二本開けるんだよ、それもほぼ毎日！
　幸い、安いワインにしてくれているみたいだけれど、そろそろ禁酒してほしい。家計が火の車です。