08. ページ11
あの後、天馬くんと幸ちゃんが喧嘩したりなんだかんだあったけれど、ようやくオーディションを始めることになった。
俺はいづみの隣の席に腰掛けて舞台を見上げるような感じだ。
春組の五人は後ろの列に座っている。
課題は、「おはよう」で喜怒哀楽を表現すること。
いづみ「じゃあ幸くんから」
幸「はーい」
…うん！初心者にしてはなかなか上手い。
幸ちゃんなら女役もできそうだし、活躍してくれそうだなぁ。
いづみ「じゃあ、次は一成くん」
一成くんもなかなかだな〜！台詞変わってたけど器用そうだし、練習次第かな。
いづみ「はい、次は椋くん」
声が小さい…けどやる気はあるみたいだし…あ、あとパントマイムとか演らせたら上手そう！
俺が一人一人の演技についてそんなことを思っていると、天馬くんがため息を吐いた。
天馬「はぁ……」
椋「！ご、ごめんなさい！」
『ん？謝る必要ないよ？』
幸「そこのポンコツ役者がため息なんか吐くからだよ。ほんと、うざい」
天馬「ああ！？誰に向かって言ってんだ！」
いづみ「次、天馬くんお願い」
天馬「ふん。＿＿＿＿」
天馬くんの演技は、流石プロとでも言うべきものだった。
しっかり声色と表情で喜怒哀楽が表現できてる。
なんでオーディションを受けに来たんだろう…
ただの興味本位？
それとも…
天馬「＿＿い」
俺と同じように……
天馬「＿_おい！！」
『わっっ！？』
どうしよう 考えこんじゃって周りの声聞こえてなかった…。
顔も暗くなってたかも。
天馬くんめっちゃ怒ってる…
天馬「そんなに俺の演技が下手だったか？」
『いや、決してそんなんじゃ…』
天馬「確か監督補佐だったな。
なら当然、役者経験あるんだよな？」
『えっ』
天馬「この俺に演技指導できるほどの実力か確かめてやる。舞台に上がれ」
幸「ちょっと、ポンコツ。何様？
何 無茶苦茶なこと言ってんの？」
『…わかった』
俺がそう言うと、幸ちゃんは不本意そうな顔をしながらも身を引いてくれた。
他のみんなも驚いたようにこっちを見ている。
これを断ったら更に面倒なことになりそうだし、それに、ただここで天馬くんに認めてもらえるような演技をすればいいだけの話だ。
これは本番じゃない。
至「……」
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