__ chocolate.46 ページ46
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チョコレートボックスを持ったまま、
何の反応もしてくれない彼に自信が無くなる。
夜だからか、何の音もしない空下に
擽ったさを感じて柄にもない事を言ってみる。
「 本命チョコ、ってやつ…です、かね 」
本当はもう少し余裕ありげに言うつもりだったのに
言っている最中に恥ずかしくなってしまって
視線を宙に浮かせて、そっぽを向いた。
すると…
『 あ"ーもう、…ほんと、…嬉しすぎる… 』
赤くなっている顔を隠そうと口元に手を当てて
ニヤける口角を必死に抑えているのか
いつもの美しい顔を崩して彼が言い放った。
私の頭の後ろに手のひらを回して
自分のおでこと、私のおでこをくっつけると
はにかみながら白い息を吐く。
『 もうAの事、離してやれないよ? 』
それが嬉しくて、恥ずかしくて…
返事をする代わりに微かに首を縦に動かすと
そのまま、静かに顔が近付けられた。
まさか、と思って目を閉じれば、
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── 愛してる
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チョコレートよりも甘い言葉を掛けられて
彼と私の間の距離は、ゼロになった。
もう寒さも、寂しさも、切なさも消されていた。
二人分の幸せな声が小さく木霊して
互いに視線を交わらせれば、
今まで感じたことの無い感情になる。
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『 これ、Aも一緒に食べる? 』
「 え…いいの? 」
『 俺はむしろ、その方が良い 』
「 じゃあ、食べる 」
綺麗に並べられた中から一粒だけ摘んで
私の口元に運んでくるから、仕方なく口を開けば
予想通りチョコレートが舌の上で溶けた。
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きっと、恋もチョコレートみたいに
甘く溶けてしまうものなんだと思う。
でも、その分、たくさんの淡い味があって…
これから私はその味を、
ひとつひとつ噛み締めるんだ。
大好きな、彼と一緒に。
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fine.
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さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - あぐた。さん» わぁぁぁぁぁ!ありがとうございます!! (2020年2月21日 21時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - さくらんぼ&チェリー@サブさん» コメント、ありがとうございます。ベテランだなんて…まだ投稿を始めて数ヶ月も経っていない未熟者です。また作品読ませて頂きますね!(^^) (2020年2月21日 1時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - いんこです!hit数がスゴい……ベテランさんですね! (2020年2月21日 1時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - ゆかさん» コメントありがとうございます。ただいま下書きをしております。公開予定は今週末を予定しておりますので、もう暫くお待ち頂ければ幸いです。 (2020年2月18日 10時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆか(プロフ) - いつも読ませて頂いています!是非新作も読ませて頂きたいのでパスワード教えて頂きたいですか (2020年2月18日 10時) (レス) id: ad4f41f45e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あぐた。 | 作成日時:2020年1月25日 21時