深甘チョコレート〈 平野 〉

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たまたま首にかけていたペンダントを開いて


そこに書かれている電話番号を


スマホの通話機能に入力する。








普通にメッセージを送ればいいはずなのに


返事が返ってくるまで待っていられる気がしなくて


通話をかける手段を選んでしまった。








それに、声も聞きたいと思っていたから。








単純に、私のワガママだった。








出るわけないと分かっているつもりでも


心のどこかでは、出てくれるんじゃないかと


淡い期待を抱いていて。








無機質な呼び出し音に、勝手に虚しくなっていた。








一回、二回…と回数を重ねるコールに


さらに辛くなっている自分がいて。








「 情けないな… 」








あぁもう…本当に自分はタイミングが悪い…と


諦めて耳からスマホを離した時。








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── もしもし？








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スマホの画面が、接続画面に切り替わった。








聞き慣れたハスキーな声がスマホから流れて


油断していた私は、何を言おうとしていたのか


忘れてしまい…辿々しい返事をしてしまった。








「 …ぁ、ご、ごめんなさ…急に、 」


『 別に大丈夫だけど。なんかあった？ 』








今、ドラマやってる時間じゃなかったっけ、と


私の気も知らずに心配してくれるけど


その優しさが、嬉しいようで、切なくて。








「 今、どこに、いますか… 」








絞り出すように聞いてみると、平野さんは


意外にもすんなりと今いる場所を教えてくれた。








『 え、なに、どうした？ 』








場所を教える言葉に続けて、


戸惑いを隠せないといった様子で


途切れ途切れの言葉を掛けてくれる。








テレビに映る役に入りきった平野さんと


スマホの向こうから聞こえてくる声色に


激しいギャップを感じる。








「 …会いに行っても、いいですか 」








そうやって言ってみれば、スマホから流れたのは


感嘆が抑えきれなくなった吐息だった。








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