・ ページ14
落ち着ける場所と案内されたのは彼等の自室だった。
ハンターの部屋とは全く落ち着けたものでは無かったが、出された茶の香りにいつの間にか緊張は和らいでいた。
｢…こんな感じで、今はとにかく元の館に戻りたいんですけど…｣
｢なるほど…不運な事故に巻き込まれてしまわれましたね｣
ハンターというものは皆おぞましい異形の様に思っていたが、話してみるとそうでもなさそうだった。ゲーム中でもかなり冷静沈着な方に見える"白い方"がこの状況で近くに居てくれるのはとても心強いことだった。
もし他にも頼れる者がいれば、何か突破口が見つかるかもしれない。
｢あなたのように、他に安心して対話できるハンターは…｣
｢私の事を安心だと認識なさっているのですか？｣
私の問いを遮るかのように彼はずいと身を乗り出し、高揚した顔でこちらを見た。意図していなかった動作に、私は反射的に体を引いてしまう。
｢ふふふ…いえ、いえ…すみません、怯えないで。ただ嬉しかっただけです、ふふ｣
謝罪を述べ、乱れた自身の髪を撫で付けてから必安は姿勢を元の位置に正した。
一瞬、本当に一瞬だけ彼を恐ろしいと思ってしまったのは、その勢いに気圧されただけなのだろうか。
漠然とした疑問を茶と一緒に喉に流し込めないか試してみるも、不愉快な胸騒ぎが残るだけだった。
｢安心していうのは難しいでしょうね…何せ私達ハンターは獲物を蹂躙せずには居られないものですから。そうだ、原因が分かるまでこの部屋で過ごしてはいかがですか？｣
｢あの、それは流石に悪いです…｣
｢大丈夫、人が生きれる環境は確保してあるので！きっと無咎も喜びます！｣
嬉しそうに語りかける彼は、会話の歯車が少しずつ噛み合わなくなっているのが分かっているのだろうか。先程までの不安が警鐘に変わる。この場に居てはいけないと本能が訴えかけていた。
席を立ち、相手と目を合わせながらそろそろと移動する。
｢…あの、まずはナイチンゲールという方がいるはずなので、その人を頼ってから、｣
｢外は危ないですよ｣
踏み出したはずの1歩が着地点を失って、目に映る風景がぐるりと歪む。平衡感覚を失いそのまま打ち付けられるかと思いきや、再び冷たい腕の中に抱かれていた。
ああ、彼も例外なく狩人なのだ───
｢だから言ったでしょう、ここが1番安全なんですよ…ふふ、遠慮なく頼ってください、それからずっとここにいましょう、ね？｣
選択肢を無くして、私はただ虚ろな目で頷いた。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←◆安全圏に堕ちる[白黒無常]
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃(プロフ) - ステラテスさん» ありがとうございます！早速リクさせてください🙇♀️日を蝕む者で夢主がイタカに反発したけど敵わなくて逃げたけど結局捕まって監✘禁されてしまうみたいなお話が見たいです！コメント再書き込みしてます💦改めて更新頑張ってください！ (7月14日 17時) (
レス) id: b3de71fca2 (このIDを非表示/違反報告)
ステラテス(プロフ) - 瑠璃さん» コメントありがとうございます、そう言って頂けて嬉しい限りです！これからもマイペースながら、ゆるりと更新して行きたい所存です。もちろんリクエストも受け付けていますので、なんなりとお申し付け下さい！ (7月11日 21時) (レス) @page13 id: 6c8573e34b (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - こんばんは、夜分遅くに失礼します。主さんの小説が目に入ったので読んでみたらとても面白かったです！お体に気をつけて更新頑張ってください！それと、リクエストは受け付けていますでしょうか…？ (7月11日 1時) (レス) id: b3de71fca2 (このIDを非表示/違反報告)
ステラテス(プロフ) - 葦織さん» コメントありがとうございます！悲しい方に走りがちですがそう言って頂けるととても嬉しいです！ありがとうございます。 (2021年5月12日 0時) (レス) id: 6c8573e34b (このIDを非表示/違反報告)
葦織(プロフ) - 悲しいけど好きです(´；ω；｀) (2021年5月10日 0時) (レス) id: 2d3ed3418a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ステラテス | 作成日時：2021年5月9日 18時
