45 秘密だから ページ46
ふと、隣に座る彼に肩を掴まれる。
「…え、あの、夏目く」
「黙って」
彼のその一言に、ぴくりと身体が固まった。
それはまるで魔法に掛けられたみたいで、意思とは裏腹に一切動けなくなって。
唯一自由が効くからと横目に部屋の時計を見れば、既に20時50分をさしていた。
「余所見してる場合？」
囁くような声が、左の耳元で聞こえた。
…かと思えば、突然顎を持ち上げられて視界が先程よりも上昇する。
咄嗟に目を瞑ったその一瞬。
鼻のてっぺんには、なにか柔らかい感触が触れた。
一瞬にして離れたソレに、ゆっくりと瞼を開く。
触れてしまいそうな距離にある彼の顔。
彼の黄金色の瞳には、ただ一つ、私だけを写している。
驚いて咄嗟に逃げようとしたけれど、それよりも早く彼に捕まってしまう。
きっと今私の顔は林檎みたいに真っ赤になっているんだろう。じわじわと熱が顔に集まっていく感覚があった。
「これでもう、忘れないでしょ」
彼のその言葉が、すとんと心の奥に沈んでいくようで。
気付けば身体の自由は戻っていたけれど、力が抜けてしまって椅子から立てそうにない。
慌てて何だったのかと尋ねても「何だろうネ」なんて返されて、せっせと帰り支度を始める彼に、私も座りながらだが荷物をまとめ始める。
時計の針は21時。
地下室を出て階段を登り、いつもの扉を半回転。
すっかり空は暗くなっていたけれど、大窓が並ぶ廊下は月明かりによって一面白く照らされていた。
( …なんでもない夜の廊下なのに、なんだか凄く神秘的に思えてくる )
「月が綺麗だね」
窓越しに空を眺めそんなことを言えば、彼は黙り込み私の顔を見る。
「ソレは告白と受け取ればイイのかナ？」
「…え？」
そういえば、『月が綺麗ですね』って言葉は告白に当たるんだったけ。
本当に無意識だったのだと彼に説明すれば、涼しげな顔で「ハイハイ」なんて流されてしまった。
「…また揶揄った？」
「そんなにしょっちゅう揶揄ってるつもりはないんだけド？」
「どうかなぁ……………」
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
