37 背中を押された気がしたから ページ38
ぼんやりと空を見上げる。
「………暑い」
屋上にいればそりゃ当たり前なのだけれど、じんじんと照らす太陽にツウと汗が頬を伝う。
あれから一晩考えたけど、結局どうしたらいいかなんてわからなくて、クラスには当たり前の顔で明星くんと話す遊木くんがいるからまた困惑させられる。
「私には何ができるの」
ぽつり、溢れた言葉に返事なんて待っていなかった。しかし薄っすらと、どこかから私の名を囁く声が聞こえてきたのだ。
…後ろじゃない。横でもない。まさかと思って空を見上げても何もない。
もう一度正面を見れば、どういう仕組みなのか私の目の前にはニコニコと笑う日々樹先輩の姿があって。
「おや、あんまり驚いてないですね？」
「…すみません、驚きすぎて喋れませんでした」
「それはそれは申し訳ない！」
日々樹先輩の表情はとても申し訳なさそうには見えなかったけれど、さあさあと手を引かれ屋上のベンチに座らされる。
それにしても暑いですね、グリーンカーテンでも作りましょうか。
彼がそう言ったかと思えば、手品のように一瞬で薔薇のトンネルが作り出される。…グリーンカーテンってこんなだっけ？日除けにはなるからいいのだけれども。
「先輩は器用ですね」
純粋に褒めたつもりだったのだが、彼はぽかんとした顔で私を見た。
癪に障ることを言ってしまっただろうか。
慌てて謝ろうとすれば、下げた頭に彼の手が乗って、赤子をあやすみたいに優しく撫でられて。
「私は貴女のどこまでも真っ直ぐに人に向かう所、羨ましいと思っていますけどねぇ」
「…初めて言われました」
「言わないだけで思ってる人が多いんでしょう」
彼はただ優しく微笑んだ。
＿しかしそれは舞台の暗転の如く、彼の表情は一変する。
「所で、時期に明星スバルくんはもう一度孤独になるでしょう」
…え、と意図がわからず首を傾げるも、彼は私には気も止めず舌を回し続ける。
「終わったと思っていた過去の地獄が突如として再び襲いかかる訳です！しかも今回は信頼していた仲間にも段々と離れられてから…！」
あぁ、なんということでしょう！こんなにも悲しいお話他にあるでしょうか？
一人熱演する日々樹先輩に置いていかれながらも、私の脳内はただ一人彼のことばかりが過ぎって。
「さてAさん、これからどうするかは、貴女自身が決めることですよ。
一年ぶりのこの状況…貴女にしか出来ないことをおやりなさい！」
屋上を飛び出すその瞬間、なんとなく、優しく背中を押されたような気がした。
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
