2 暑いから ページ3
プロデューサーが倒れたあの日から約一週間が経つ。
彼女のいない学校生活は、驚くほどに以前と変わらなかった。
流石に初日は、例の現場に居合わせた二年生の間では少しギスギスとした空気が流れていたものの、彼女のいない教室は今ではもう当たり前になっている。
授業を受けて、仲のいい友人グループでご飯を食べて、レッスンを受けて帰る。彼女のいない毎日を少し寂しく思いつつも、それは最早当たり前のこととして受け入れられている。
あの日から、Aとは連絡が取れないままだ。
先生に何度か声を掛けてみてけれど、病院のことも、病状のことも、詳しいことは何も教えてもらえなかった。
あの日は特別暑い日だったから、大方熱中症だったんだろうって噂だ。俺も何となくそうなのかなぁって思ってるけれど、俺たちから彼女に会いに行くことは出来ないもどかしさに日々苛まれている。
連日空いている隣の席が物寂しい。
夏だってのにクーラーが故障したうちのクラスは、今月一杯この猛暑を窓を全開にしてなんとか乗り切らなくてはいけなくて、運良く窓際の席になった俺は、授業中なのにも気にせずぼんやりと空を眺める。
なんか、あんまり綺麗じゃないなぁ。
「ねぇA、なんか今日の空…」
右手を伸ばした隣は空席だ。
いつもみたいに俺に笑いかける笑顔はなくて、やっぱり物足りなさを感じる。
ああ、そうだ、いないんだった。
不意に、前に席替えをした時、二人で隣になれたことを喜んだことを思い出した。
あぁ、あれはいつのことだったっけ。
あんまり覚えてないけど、楽しかったのは覚えてる。
( ねぇ、今は全然楽しくないよ、A )
早く帰ってきてね
ノートの端っこに小さく書いた8文字。
俺はおまじないなんてできないし、きっと意味なんてないんだろうけど、書くだけなら許されるよね？
ふと、教科書を忘れた時のことを思い出す。
彼女はいつだって少し呆れつつも机をくっつけてくれた。
いつもより近い距離に少しドキッとしたり、先生にバレないようにとノートに文字を書き合って喋った時のこととか、いつだって優しくはにかんでいた彼女の面影を思い出す。
腕を伸ばして机に突っ伏せば、熱の登った頬がひんやりと冷えて気持ちが良かった。
( ああ、早く帰ってきて、またプロデュースして欲しいなぁ。)
嫌に暑い風が俺の夏服をくぐる。
嗚呼、早く夏が終わればいいのに。
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
