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A「太宰さん、狙われてるの気づいてたよね。でも、避ける素振りを微塵も見せなかった。それは、何故」
きっと彼女は分かっているのだろう
今の彼女の言葉は、疑問の形式を取っているようで、その実、疑問ではないのだから
だから私は隠さず素直に答える
太「あれで死ねたら願ったり叶ったりだったからね。まぁそれも、Aに邪魔されてしまったけれど」
そう云うと、彼女は僅かに口を開いてから、そのまま何も云わずに口を閉じ、何やら思案し始めた
そしてもう一度、次は慎重に、口を開いてゆっくりと言葉を紡ぐ
A「…好きにしてくれて良いけど、私の前でそういうことするなら止めるよ」
太「…やめろ、とは云わないのだね」
A「私に貴方の行動を縛る権利はないから」
太「そ」
彼女の声は、僅かに憂いを帯びているように感じた
私はそれに対し、特に言葉を繋げることはしなかった
暫しの沈黙の後、彼女は思い出したように口を開いた
A「そういえば、あの任務の敵構成員の中に、練度の高い人達がちらほらいたよね。軍人崩れかな?」
確かにいた
恐らく私を狙撃しようとしたのも'それ'だろう
太「可能性はあるね。それにあの感じ、どうも彼等があの組織の仲間だと感じないのだよね。別組織が動いているかもしれない。調べてみようか」
A「ん」
私がそう云えば、微笑んで頷いた
しかし、今にも眠ってしまいそうなほど、今のAの目尻は垂れていた
私は少し笑い、目尻を撫でて問いかける
太「眠いの?」
A「ん」
そう問えば、彼女は私の撫でている手に擦り寄って短く答えた
私は続けて彼女に云った
太「眠って良いよ。私は此処にいるから」
すると、意識を飛ばすように直ぐに眠ってしまった
まだ傷も痛むはずだ
それなのに長話をしてすまなかったと思う
太「お休み。A」
彼女が不安にならないよう、私はまた、この場で作業を始めた
おまけ
美「A、大丈夫か?」
太「しーっ」
美「ん、なんだ、寝てるのか」
太「今寝たところだよ。タイミング悪かったね」
美「まぁ…また来ますよ」
太「うん。この娘も喜ぶだろうから、是非」
美「……失礼しました」
太「全く、君の拾ってきた子達は難しい子ばかりだよ
君の云う事以外、聞くつもりは毛頭ないらしい」
太「だから、早く元気になり給えよ。あの子達もきっと安心するさ。勿論、私も含めてね」
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作者名:紫乃 | 作成日時:2023年1月30日 17時