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夕方のカフェは、
昼の喧騒が嘘みたいに落ち着いていた。
「いらっしゃいませ」
ドアベルの音に顔を上げて、
一瞬だけ、言葉に詰まる。
「……こんにちは」
ジョンハンさんだった。
今日は一人。
「こんにちは」
ちゃんと、距離を保つ。
そう決めたはずなのに。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「うん。
今日もAちゃんがいると思って来たんだ」
心臓が、分かりやすく跳ねる。
「……え?」
思わず声が出てしまった。
「冗談」
そう言って、
少しだけ笑う。
冗談にしては目が笑っていない。
「アイスコーヒーお願い」
「……はい」
ドリンクを作りながら、
背中に視線を感じる。
落ち着かない。
「ね」
カウンター越しに、
また声が飛んでくる。
「最近、避けられてる気がするんだけど」
「そんなこと……」
「あるでしょ」
静かに言われて、
誤魔化せなかった。
「俺、何かした?」
その聞き方が、
責めるんじゃなくて、
心配するみたいで。
「してません」
「じゃあ、なんで?」
そんなの、
答えられない。
沈黙のあと、ジョンハンさんが小さく息を吐いた。
「前はさ」
懐かしむみたいな声で言う。
「目、ちゃんと見てくれてたよね」
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作者名:tymyrt | 作成日時:2025年12月22日 18時


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