無限の未来 15th season (ページ10)

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710話ページ10

【慎太郎】

青「さんきゅー、高地。あっこからじゃ全然見えなかったわ」

黄「椅子座ったり、補聴器外したり、自分でもなんとか対処してたんだけどね。ちょっとタイミング悪かったかなぁ」

休憩の合図が出たのとほぼ同時に、Aは隣にいた北斗に体を預けるように、座っていた椅子から倒れ込んだ。

一瞬何が起こったのかよく分からなかったけど、青白い顔で北斗に支えられるAを見れば、察するのに時間は掛からなかった。

緑「A、後半出られるの…？」

赤「俺、この状態で出したくないよ？」

黄「本人の気持ち次第だけど…多分、後半は出ないだろうな…。今日、ちょっと珍しく奥手なんだ」

普段だったら、多分意地でも出るって言うんだろうけど、高地がそういうなら、きっと間違いない。

Aが少し大人になって受け入れてるのか、それとも本当にしんどすぎて、どうしようもないのかは分からないけど…。

青「お前ら、そんな心配そうな顔すんな。体調悪くないとは言えないけど、後輩グループのいる手前、無理して心配させたくないだけだから」

緑「樹…」

赤「無理しないことを、頑張ってたんだね。あちゃ、ちょっと熱上がってるかも～」

ジェシーの言葉に、苦笑いでAを起こす高地がいて、高地の言葉を通訳する北斗がいる。

テキパキと動く、きょもの手にはスポドリと体温計。

青「慎太郎、ちょっと外行こうぜ」

緑「えっ…でも、A…」

樹は…きっとAの側にいてやりたいはずなのに、なぜか急に不安で仕方なくなってしまった俺を、連れ出してくれた。

青「んな顔すんなよ」

緑「ごめん…」

青「らしくねーじゃん。…A、お前のためにも、無理しないって決めたんだべ？」

緑「…ん？」

青「必要以上の気は遣わなくていい。治療終わって半年経っても、まだ飲まなきゃいけない薬もあるし、後遺症も検査しなきゃいけない。まだ100%再発しないってわけでもない」

青「俺だってまだ、不安だよ？でも、アイツはもっと不安なんだ。だからせめて、俺らは、俺らしく、素直にアイツと向き合いたい」

不安だと言うくせに、ニカッと笑う樹を見て、俺は久しぶりに、少しだけ泣いた。