無限の未来 15th season (ページ34)

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734話ページ34

【ジェシー】

夜公演も、Aはカッコよかった。

「これまで…何回も辞めようって思って。それでも、なんとか踏ん張ってきて。でも…もう踏ん張れないって、去年の夏…かな？思った」

全てを語るわけではなかったけど、Aがこの世界に入って、一番強く辞めたいと思った、逃げたいと思った、あの半年前のことだった。

誰にも言えないまま、一人で抱え込んで、苦しんで、いっぱいいっぱいになっていたA。

「全然前向きな気持ちになんてなれなくて。ずーっと逃げたくて、ふとした拍子に、大好きな6人のことを、裏切りそうになることが、何回もありました」

「でも、そんな時に…ファンのみんなのおかげで、アーティストプロモに抜擢してもらえて…滝沢くんが、最後の最後にMVをプロデュースしてくれて…」

「6人が、絶対に離さずに…引き止めてくれたから、今私はここにいられるんやと思います。この6人と、歩んで行く覚悟ができました」

ステージ上で、樹が泣いているのが見えた。

俺も、スタンバイをしながら、泣いていた。

あの日、7人で道標になろうと誓った時のことが頭に浮かんで、どうしようもなく胸がいっぱいになった。

でも、Aは泣いていなかった。

真っ直ぐにステージから会場を見渡して、真っ直ぐに強く、見学席を見つめて、深く頭を下げたA。

彼女が頭を下げた先にいたのは、ジャニーさんと、滝沢くんだった。

そして、待機する俺たちが視界に入ったとき、ニコッと笑った。

桃「泣くつもり、なかったんだけどな…俺」

赤「へへっ。あれは、ズルいよ…」

一緒にいたメンバーも、みんな涙を堪えられなくて、グッと手を握り合った。

Aがどれほどの覚悟で、あの半年前のグチャグチャな気持ちを乗り越えてきたのか、痛いほどに伝わってきた。

気持ちいいほど笑顔のAと、泣きながらギターを弾く樹が、どうしようもなく綺麗だった。

赤「これ以上ないよ。これ以上、ない。俺、このステージ…自信しかない！」

鼻の詰まった声で、俺も！って、後ろからたくさん聞こえてきた。

鼻を啜る音が止んだ時、Aの声が、イヤモニを外した俺らの耳に、綺麗に響いた。