無限の未来 15th season (ページ29)

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729話ページ29

【大我】

夢を見た。

まだ事務所に入ってすぐの、小さい頃の夢だった。

何にもわからないまま、ステージに立ったあの日。

「ジャニーさんの、バカっ！」

小さな女の子が、おじさんに向かって、そんな言葉を吐き捨てながら、泣いていた。

ちっちゃな体で、俺よりずーっと後ろの、目を凝らさないと見えないようなところで踊っていた子だった。

でも、俺には一番、キラキラ輝いて見えた子だったから、すごく印象的だったんだ。

亀梨「なーに怒ってんだよ」

「和にぃも！なんで！な！ん！で！ｯｹﾎｹﾎｯ…ｹﾞﾎｯ…」

亀梨「あーあー。そんなに大きい声出さない。ライブ頑張ったばっかだから。ほら。また苦しくなるでしょうが…。ねぇ、聖～」

軽々と、当時まだ名前くらいしかちゃんと知らなかった亀梨くんに抱き上げられて、その腕の中で、泣きながらちょっと暴れるちびっ子。

あれが、俺にダンスを初めて教えてくれた裕翔くんさえも一目置いていた、坂本Aだって知るのは、もう少し先の話。

「私、負けないから。絶対」

桃「えっ…」

「私だって…できるもんっ！」

“こんな子、大っ嫌い！！！”

あの日、Aは高熱を出していたらしい。

体調が悪くても、前の方で踊れなくても、それでもステージに立ってたって聞いたのは、もう何年も先で、その頃にはもう、ただの笑い話になっていた。

彼女の底知れぬ根性を気に入っていたKAT-TUNのお兄さんたちが、どんな場所でもと、必ずバックにつけるJr.として指名していたのがAだってことも。

「大我くん？」

桃「おおっ」

「あ、ごめん。寝てた？」

桃「ん。Aと、初めて会った日の夢見てた」

あの頃から、随分と時は経ってしまって、俺たちもそれなりに大人になった。

あの頃思ってたような大人には、なれていないけど、それでも着実に、歳は重ねてるし、嫌ってほど、いろんな経験もしてきた。

「明日もよろしくね、大我くん」

桃「ん。無理しないでね」

「…ごめんね、初めて会った日」

桃「…随分と暴言吐く子だなって思ってたよ」

「大丈夫、今は大好きやで」

そう言った君は、あの時と同じように、また言い逃げをしたんだ。