無限の未来 15th season (ページ13)

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713話ページ13

【ジェシー】

赤「もー。そんな泣かないでよ…」

ふぇ～んって…赤ちゃんかよっていう泣き声を楽屋に響かせてるのは、うちの紅一点。

めったにAには怒ることのない樹が、珍しくブチギレたらしく、恐怖やら悲しみやらで、感情がぐっちゃぐちゃ。

「んっ…ｯ、ｸﾞｽｯ…」

赤「そんな泣いてたら苦しいでしょうが…」

悲しいけど、今俺の発しているこの声は、微塵もAに届かない。

発端は、Aとドラマで共演中の藤ヶ谷くんからきた一通のメール。

“Aって、両方耳聞こえてないの？”

今では右はほとんど聞こえてないけど、左耳はまだ半分くらい聴力が残っていたはず。

黒［今回は、Aが悪いよ。樹も、怒って当然］

赤「どうすんの？本番」

青「右に補聴器つけて、イヤモニなしでやるしかねぇだろ。自業自得」

大阪入りする前に、半ば無理やり樹がAを病院に連れて行った結果は、左耳のストレス性の難聴。

藤ヶ谷くんが早めに気づいてくれたこともあって、すぐに治療に取り掛かることはできたけど、明日の関西コレクションには間に合わず。

青「なんで本番のたびに、こうもトラブルかな…」

赤「A、最近ずっと夢のせいで眠れなかったんだって？」

青「多分ね。それしかストレス思い当たることない」

黒「困った子だよ、ホント…」

俺らの会話を、ウルウルした目で見つめながら、唇を噛むAは視界にいるけど、お構いなしね。

“何話してるかわからない！！！”って俺らに逆ギレするAが、もう一度樹に叱られるのに、そう時間はかからなかった。

青「いい加減にしろ！」

赤「樹、落ち着きなって…怒りたい気持ちはわかるけど、A、怯えてるよ？逆効果だよ…」

青「…ごめん。ん。補聴器つけよう？」

リハまでは、なるべく補聴器を外させてたけど、今のこの状況…聞こえないこと自体がストレスになってしまうから、仕方なく。

右耳だけでも聴こえるようになったことで、ようやく成り立つ会話。

青「ちょっとのストレスでも、どうしても負担になっちゃうんだから…ね？悔しいだろうけど…」

“それが、Aなんだよ…”って言う樹の声が、震えていた。