509話 ページ9
【高地】
黄「はい。きました、ソロ問題。Aー、何歌うのー？」
「A決まってるもん。今回こそ、STAY歌っていいって言われたし、それか…Eternalかな？」
黄「…歌いたいことが明確だな」
黄「どっちもいいんじゃないかな？きっと、Aの思ってることは伝わるよ」
本当は、別のやつに相談した方がいいんじゃないかって思うけど、Aは毎回決まって、ソロ曲の相談を俺にしてくれる。
1年前の夏。歌いたくても歌えなかった曲。
それは、厳しい現実の中でも、共に生きていこう、一緒に歩もうというメッセージ。
「Eternalはね…仁くんが、いつかAがもう少し大人になったら歌ってほしいって、そう言ってくれた曲やから。…まだ早いかな？」
それぞれの曲に込めた想いを、丁寧に教えてくれるAの言葉を、俺もそれを溢さないように汲み取って、文字に起こしていく。
“前に進みたい”
“6人と一緒に進みたい”
“もっともっと、生きたい”
この前向きな言葉たちの裏に、どれほどの後ろ向きな気持ち、悲しみ、悔しさ…それに、怖さが隠れているかも、これまで向き合ってきたつもり。
「Eternalかな？まだ、そこまで成長できてない気もするから不安やけど…」
黄「俺もそっちかなって思った。んー、上手く言えないけど…歌い重ねていくことに意味がある気がするから、今のAな気持ちで歌ってもいいと思う」
「ん、ありがとう！他のメンバーにも、聞いてみる」
黄「うん、そうしな」
Aが置いてった荷物の一番上にあった体調管理ノートを手に取れば
最近よく書かれているのは、“負けたくない”という6文字。
放射線治療と化学療法を並行しているAは、正直身体もキツい状態だと思う。
そんな中でも、駆け抜けた秋と、まだまだ終わらない冬。
「高地、AやっぱりEternal歌う！」
黄「ん、りょーかい」
全てのステージに、全力で挑む。
それが、今俺たちにできること。
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年12月15日 20時
