528話 ページ28
【大我】
「結論から言うね」
そう言って話し始めたAから提示された2択は、
頭を切って腫瘍を摘出する
もしくは
思い切って…治療を、止める。
彼女の中では、もう一択になっていることくらい、俺たちにだってわかっていた。
だから、伝える言葉はひとつ。
桃「切ろう、A…。手術、受けよう」
その一言だけだった。
誰も、反対する者はいなかった。
「ありがとう、大我くん」
背中を押して欲しかった、それだけなの。
って、みんなと離れて部屋に2人になってから言われた。
やっぱりAは、全てを決めてここへ戻ってきたんだって、それが少し嬉しかった。
桃「元々、治療を諦める選択なんてしないのに、何であんなこと言ったの」
「…怒った？」
桃「全然。ただ、純粋に疑問だっただけ。いくら背中押して欲しかっただけにしても、Aがあんな極端な比較対象出すなんて珍しい」
そう言えば、少し困ったような、迷ったような表情を向けてくるから、何を言われるのかと少し怖くなる。
彼女は彼女なりに、いつもSixTONESのことを考えている。
それゆえに、抱えすぎることも、時には…グループにとってプラスになるならと、自分のマイナスを優先することだってあることを知っていたから。
「あれは、グループに残るか…辞めるか、その二択だった。あの時もし…誰か1人でも“止めてもいいよ”って言ってたら…」
“私はその場でSixTONESから抜けるつもりだった”
桃「ありがとう。俺たち“7人”のために…生きようとしてくれて、ありがとう」
「大我くん…」
桃「…ちょっとクサかった？」
手術は、2月に入って直ぐ。
それまでは、治療を一度緩めることになった。
それによって、良いことも、悪いことだってある。
急に頭痛がすることも、ステージ上で思うようにいかなくなることだってあった。
でも、お客さんの前ではプロを貫いたAを、俺は称賛の拍手で送り出したいと、そう強く感じた。
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年12月15日 20時
