523話 ページ23
【樹】
やっとコンビニに寄れた頃には、Aもかなりの量を戻してしまっていた。
車内の空気に酔ってもいるだろうし、一回外へ出た方がいい気もするけど、とても立ち上がれる状態ではなくて。
Aの体調のこともあって、今日は飯も食いに行かず出てきたから、時間的には余裕があったけど、ちょっとだけ休憩してコンビニを後にした。
青「まだ気持ち悪い？」
「だい、じょぶ…」
青「んー、手ぇ冷てぇな」
結構戻してたし、ちょっとだけ低血糖のような状態になってしまっていたAを落ち着かせていたところに、ガタッと車が揺れた。
それを合図に、少し落ち着いてきていたAの吐き気はまたぶり返してしまって。
本人ももう訳が分からなくなっちゃって、吐き気が止まらない。
「ｺﾞﾎｯ… ｹﾞﾎｯｹﾞﾎｯ……ｯ、ｳｴｯ…ｺﾞﾎｺﾞﾎｯ……ｳｴｯ…やだぁ…ｯ、ｳｴｯ…ｺﾞﾎｺﾞﾎｯ……ｳｴｯ」
青「うん、やだな…。うーちゃん、病院寄ってもらえるかな。んで、一人暮らし組その間に送れる？」
植田「オッケーです」
黄「じゃぁ、病院、一人暮らしメンバー、シェアハウスって送ってくれたら俺、迎えにいくよ」
“病院”というワードを聞いて、嫌になったのか、急にAの吐き気が治まった、というか必死に戻すのを我慢をしている。
黄「A、我慢しないよ。苦しいでしょ…」
「(ﾌﾘﾌﾘｯ)」
高地がうまく声をかけてくれても、込み上げるのを我慢し続けるA。
ほっといたところで、ただ苦しいだけなのは分かってるから、強めに背中を摩ったり叩いて刺激をすれば、さっきよりも大きく波打つ背中。
青「ごめんごめん、苦しいな」
黄「A、もーちょっとで病院着くからね〜」
病院では、すでに福澤先生が待機してくれていて、思ったよりもギリギリの状態だったらしい。
本来なら、明日は抗がん剤を入れる日だったけど、この体調では無理そうとのこと。
うまく行かない現実に、隣にいた北斗と2人、どうすることもできずに唇を噛んだ。
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年12月15日 20時
