無限の未来 4th season (ページ10)

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160話ページ10

何度、こんなふうに自分の体から期待を裏切られたらいいんだろう。

骨肉腫が再発してからは、ずっとずっと、裏切りと希望の繰り返しだった。

誰が悪いわけでもない。裏切るのは…この病気で、わたし自身のこの体。

Dr.「肺の方は…病変も含めての部分的なもので、全て切除ができました。ただ、そのために呼吸機能が前よりも落ちてしまって…。それと、脳の腫瘍は取り除ける部分に限界があるので、今後は放射線治療と…」

長男「…聞いてる？A」

「ん？…あぁ、うん。聞いてるよ、大丈夫」

長男「すんません、続けてもらっていいですか…」

福澤先生の言ってる言葉は、聞こえてるけど、正直あまり理解できなかった。

というか、もう色んなことがぐっちゃぐちゃに頭に入ってきて、そのどれもが、まさかそんなことになるなんて思ってなかったことばかりで、受け入れたくなかった。

ただ、数週間後に迫った野球部の冬合宿に参加できないことだけは、なんとなく察した。

その期間だけは、なんとかみんなと歯を食いしばれるようにって…ただそのためだけに、目の前のことだけに、前を向いていたのに。

だから…もう、全てがどうでも良くなってしまった。

樹が私の異変に気づいてくれて、わたしはほとんど覚えていないけど、そこまま緊急でオペを受けて、それから一度だけ目が覚めたみたいだけど、記憶はない。

そのまますぐにまた意識混濁に陥ったらしくて、そこから3日ほど意識が戻らなかったと聞いた。

「そのまま…目が覚めなければよかった……」

一度そんなことを思ってしまったら最後。

気づいたら、腕に刺さった点滴を抜いていた。

点滴から、煩わしい色々から逃れる方法なんて、もっと他のやり方あったんだろうけど…もう、無理だった。

そんなこと、考えてる余裕すらなかった。

ちゃんと止血してないから、当然のように血が出てくる腕さえも、今はなんとも思わなかった。

点滴だけじゃない。

酸素マスクも、全部外した。

「…どこ行こう」

病気になって2年半。

初めて、病室から逃げた。

初めて、治療の全てを、拒否した。

たった数メートル先のエレベーターホール。

そこまで行くのさえ、流れる酸素から逃げた私には苦しくて、情けなくなった。

できることが一つずつ減ることが、悔しかった。