無限の未来 4th season (ページ50)

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200話ページ50

【片寄】

益田さんに声をかけられたAが、一瞬で固まるのが分かった。

それ以前から、彼女の視線に、表情に、一挙手一投足に怯えるような、怯むような…そんな、Aらしくない姿を無意識に見せているのは気になっていたけど…。

片寄「Aー？部屋、帰らん？」

「あー…っ、ん。大丈夫。仕事のこと、話さなあかんからさ。すぐ、戻るわ」

片寄「…ん、あんま遅くなるなよ」

そう言われてしまっては、それ以上止めることができなくて。

それねも、Aの普段と違ったその様子に嫌な予感がした俺は、部屋に戻りかけた佐野を呼び止め、食堂の外で2人を待った。

何もなければ、それでいい。

佐野も同じ気持ちだったのか、“俺、なんか嫌な予感するんだけど”と伝えれば、一緒にその場に残ってくれた。

佐野「女2人の…戦いか」

片寄「よせ…」

佐野「…ふざけてないと、なんか起きそうじゃん」

嫌な予感がしているのは、やっぱり俺だけじゃない。

食堂の奥で話している2人の声は、遠い上に声も大きくないから、途切れ途切れにしか聞こえなくて、それがもどかしくて仕方ない。

けど多分、Aに対して文句かなにかを言っていることは、間違いなさそうだった。

入部当初から、上下関係に疎いところがあった益田さん。

疎いというか…そんなことお構いなしで、間違った正義を振りかざすような子というか、とにかく、図太さや正義感だとかを、履き違えているような…。

だから、心配だった。

Aは、あぁ見えて…強くは、ないから。

益田「仕事も、満足に…なら……」

「…ごめん」

益田「なん…めに…か？」

“ガタンッ！！！！”

やべぇと思った時には、遅かった。

椅子が倒れるような大きな音がして、食堂に入れば倒れた椅子と、その間でしゃがみ込むA。

佐野「Aっ！」

「ッ、ﾊｧｯﾊｯﾊｧｯﾊｯﾊｧｯ…ったい…！」

片寄「大丈夫、大丈夫。一回足、外そか。な？」

何があったかはよくわからないけど、うまく力が入らなかったAは、何かの拍子にバランスを崩して転倒したんだろう。

その拍子に足に変な負担がかかり、左足を痛めた。

義足を外す間も、痛い痛いと泣き叫ぶA。

どんなにしんどくても、悲鳴をあげなかったAの悲痛な叫びに、俺たちは焦っていた。