夜の海、朝の月 ページ31
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「……AさんAさん」
「……。」
「起きてる？起きてるでしょ？」
……さっきから小声でコソコソなんか言ってる子ブタ。
私は何も聞こえてません。
寝かせてくれ。
「海行こ？」
「……次のオフに、ね」
「いーまー」
……あれ、とうとう頭のネジ10本ぐらい取れちゃったのかな。
“いま”って聞こえた気がするんだけど。
気のせいだよね？ね？(圧)
「明日何時だと思ってんの……。」
「明日オフですよ」
「え、うそ」
「ホント」
こんなとこで嘘つきません、と隣で寝る吉野は私のスマホを充電器から引っこ抜く。
……ホントだ、明日オフになってる。
嘘だぁ、明日早いなぁって思ってたのに。
普通に見間違えてた。
「ね？海行こ？」
「嫌」
「お揃いのシャツでいっか」
「嫌」
「下はデニムね」
「嫌」
「夜だし元が可愛いし、マスクしたらメイクはいいですよね」
「いーやーだー」
「ちょ、静かにして、」
みんな起きちゃうでしょ、と私の唇の際をつまむ吉野。
もー、まじでなんなのこの子……。
��
「なんだかんだ言って来てくれるんですね」
「寝れないんでしょ？」
「そうでも無いかも」
「よし帰ろう。」
「嘘！うそうそ！寝れないです！見て！お目目ぱっちり！」
うるさい。近所迷惑です。
結局、腕を引っ張られてめちゃくちゃ静かに寮を出た。
ギリギリ終電があって、ギリギリ滑り込んだ。
こんな真夜中に海なんて行く人はまぁいないから、割とガラガラ。
遠かったよ。うん。
「はぁー、12時半の海は誰もいませんね〜」
「そりゃあまぁねぇ。普通にぶっ飛んでると思うよ」
珍しく11時に寝始めて20分後に寮出るとは思わなくない？
まぁいつもの如く腕を引っ張られたんだけど。
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作者名：L
| 作成日時：2020年6月12日 12時
