歪みと距離 9 ページ9
案の定、次の日は目が腫れた。
「なぁ、みるきーってフリー？」
「そうだよ」
「じゃあ付き合っ！」
その言葉を最後まで言わせないぞっと言うように、友達によって振り下ろされた手は彼の背中を叩いた。
「いってぇ〜何すんだよ！」
「里香！みるきーに変な事言わないで」
「いいやん、好きなんやから」
「それ軽いから」
「軽くない。
だって、みるきー目が腫れてるやん？
男関係かなぁとか思ってさ、俺ならそんな思いさせへんのに…って思ったらつい告ってしまった」
事情を知る茉由は少し困った顔をしている。
「付き合ってほしい！」
そんな顔でそんなふうに、私に言わないで。
私は何も返せないよ。
…と、そういうのはただの綺麗事だ。
本当は、彩の前でそんなこと言わないで、とそう思ってる。
何も反応しない彼女の背中に、寂しさを感じた。
最悪の日になったのは、突然の事だった。
「誰？あのイケメン」
青色のネクタイは、一つ先輩の証だ。
私はそれを見た時、目を疑った。
その長身の先輩が笑いかけていたのは、紛れもなく彩で、そしてふたりは一緒に教室を出ていったから。
「あー、呼びに来たのか」
「え」
「あれ？みんな知らないの？
山本さん、あのイケメンさんと付き合ってるっていう噂やで？」
あぁ…わかってしまった。
「そうなんだ…」
漏れた声は多分弱々しくて涙声だったと思う。
もう隠せなかった。
だから、教室を逃げるように出て誰もいないであろう屋上を目指した。
追いついた茉由達は、私を抱きしめて泣き止むまでずっと傍にいてくれた。
「どうしよう」
「ん？」
「気づいちゃった」
「うん」
「私、彩のことが…」
神様。
もし居るのなら、私に彩を返してください。
私は彼女が好きです。
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作者名：ハル | 作成日時：2017年1月2日 19時
