時を超えて 56 ページ30
次の日、彩と由依と里香の3人は、恵に連れられてある個室へと入った。
子供たちは、一番近い小学校に通うこととなった。
「それじゃ、まず自己紹介とでもいこうか」
大人な彼に言われるがまま言葉を発する。
「あー、はい」
「俺の名前は、恵。年は28。国の兵士をしてる」
「はぁ」
彩は気の抜けた返事をする。
まだまだ理解できていないことが多すぎて、自分がこんなところに居ること自体が疑問でならない。
「んじゃあ、次は君から」
「あっ、えっと、里香です。年は18で、前は鍛冶師の手伝いの仕事してました」
「鍛冶師か…この国の兵士の武器は全てこの城の隣にある建物で作っているんだ。
そこでなら、君も鍛冶師として仕事ができるよ」
「えっ！？ほんまですか？」
「この後、一緒に行ってみようか？」
「おっお願いします！」
「んじゃあ、その隣の子」
「私は、由依って言います。里香とは双子で…。
仕事は、治癒魔法がちょっと使えるので病院で働いてました」
「なら、この国の医療チームで働くといいよ」
「いや…でも私、そんなに上手に治癒魔法使えませんし…」
「大丈夫。働きながら学べばいい。
それに治癒魔法なら、あの人に教えてもらうといいかな」
「あの人？」
「この国で一番治癒魔法に関して秀でている人で、すごい人だよ。
今は誰も指導していないみたいだし、彩の知り合いなら多分大丈夫だろうから、頼んでみるよ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、最後、彩」
「名前はって、知ってるよな。年は、わからん。仕事はクエストやって金貯めてました」
「年は17」
「えっ？」
「彩は、7月14日生まれの17歳だよ」
「…こわ」
「心外だな〜(笑)俺、一応彩の付き人だったんだけど」
恵は頭をかきながら答える。
「覚えてないです」
「まぁ、そうだよね。
んじゃあ、どっから話そうかな」
「話さなくていいよ」
「え？」
彩の断りに、その場にいた三人は驚いた。
「知りたくない…」
「どうして？」
「時々、夢に人を殺した時の光景が出てくる時がある。
もし過去にそういうことをしたからなんだとしたら…俺は…」
「知らなくていいって？
それで、もしそれが事実だとして彩の殺した人達のことまで忘れて、それでいいと思う？」
「それは…」
「彩。忘れてはいけなかったことだってあるんだ」
「はぁ…わかった。聞くよ」
そして、彼はゆっくりと話を始めた。
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作者名：ハル | 作成日時：2017年1月2日 19時
