不調 ページ19
佐久間は悔しそうにしていたが、キャプテンマークを渡す。不動はそれを馬鹿にしていた。
あまりにも選手のプライドを傷付ける行為に怒りが収まらない。
総帥…。一体何をお考えに…？
試合が始まった。
開始早々皆の様子がおかしい。
動きがかなり鈍い。足に重りでもつけてるかのよう。
「何だ…？」
「…！まさか、スパイクか…!?」
不可解な様子の源田に対し、Aはカラクリに気づいた。
選手がつけているスパイクがいつものと違う。恐らくあれに細工でもしているのだろう。
様子がおかしい彼らを見て、雷門は強気に攻める。
「『ファイアトルネード』！」
FWの技が一直線にゴールへ向かう。皆の目線が湿川に集中する。
湿川は…
「ヒィィィ！！」
避けた。
受け止めることもせずに。
「嘘だろ…」
思わず呟くが、残念ながら現実。
雷門の先制点が決まった。
その後も帝国が調子を崩している間に試合は進む。
まともにやりあえない状況である上に湿川の横暴な態度で更に劣勢に。
「キーパーの面汚しめ…！」
「本当に何であいつが…？」
考える。湿川がいる事でこちらに何かメリットがあるようには到底思えない。
むしろ、雷門が調子づいているように見える。源田だったらこうはならないだろう。
源田だったら…。
源田だったら…？
「そういうことか…」
「A？何かわかったのか？」
「ああ。おそらくだが…」
流石総帥。帝国を負かそうとしているわけではなかった。
おそらくこうだ。この後にスパイクを変えたり源田を投入することで、雷門を翻弄するつもりだ。
雷門を混乱させて切り替えられないうちに巻き返して勝つ。
多分そういう作戦だ。
あまりに総帥らしくなくて気づかなかった。
あの人はいつも完璧な勝利を望む人だったから。
「じゃあ何でAがベンチかも分かったのか？」
「いや、そこまでは…」
源田の問いには答えられなかった。Aもそこが不可解だった。なぜ自分が下げられているのか。
また考える。
自分の役割は司令塔。有人の代わりだ。
けれど総帥曰く私はソレではない。
じゃあ何だ。何をするべきなのか。
その問いに答えることのできずに2対0で前半を終えた。
＿＿＿＿＿＿
今日はいっぱい投稿したぞー！
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作者名：むめい x他1人 | 作成日時：2023年2月23日 11時
