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しかし、そうは自分に言い聞かせても、この嫌な予感は拭い去れなかった───。
すると、丸山が静かに息をついて、寂しそうな笑みを浮かべた。
それはあまりに脆く、触れたら崩れてしまいそうな程、繊細なものに感じられた。
｢そっか───｣
一瞬、その続きを喋ろうとしたのか口が開いたが、それもすぐに閉ざされてしまう。
そして、丸山はそれ以上何も言わなかった。
『今日はご馳走様でした』
｢ええよええよ。それより、ほんまに車乗ってかへんの？｣
『はい、まだ電車ありますから』
｢んー･･･、ほな気ぃ付けてな？寝過ごさんようにするんやで？｣
『はい』
まるで、初めてお使いに行く子供を見送る母親のようだ。
心配そうに眉尻を下げる丸山に、私は苦笑を漏らした。
｢寄り道したらアカンよ？無理そうならタクシー使うんやで？｣
『もう、わかりましたから。丸山さんも早く車に乗ってください』
中々その場から動こうとしない丸山に、私の方が痺れを切らし始めていた。
こんな事をしている間にも、終電を逃してしまいそうである。
おまけに、運転席のマネージャーを見やれば、待ちくたびれたようにハンドルへ頬杖をついている。
｢───あの、｣
『あとは何ですか？』
まだ何かをあるのかと、私は呆れぎみに笑みを溢して丸山を見上げた。
しかし、その表情は少し険しくて、私は口元の笑みを消す。
｢Aちゃんに、何も答えられんくてゴメン。心配させて･･･｣
これは恐らく、渋谷の話だろう。
丸山の伏せられた瞳が、落ち着きなく足元を行ったり来たりしている。
そして苦しそうに短い溜め息をつくと、困ったような笑みがこちらを向いた。
｢でも、やっぱゴメン。今はまだ何も言えへんねん･･･｣
その言葉で、やはり何かあったのだと確信する。
本当、素直な人だな───。
『そうですか』
そして私も、これ以上の追求はやめた。
それから大人しく頷いて視線を落とせば、丸山が一歩こちらへ踏み出すのが見えた。
同時に、私の耳元に彼の気配が近付き、低く甘い声が落とされる。
｢───今日のワンピース姿、めっちゃ可愛えよ｣
驚いて顔を上げると、丸山の切なげな瞳と目が合った。
｢ほなね、Aちゃん｣
そして、呆然とする私の頭をグシャグシャに撫でていくと、早々に車へ乗ってしまった。
突然の事に、私は何も言葉を返せず、ただただ動き出したバンに頭を下げる事しかできなかった。
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めめこ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編作成中ですので少しお待ちください！ (2019年6月6日 12時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
りな - 本当におもしろいです！早く続き見たいです！ (2019年6月5日 23時) (レス) id: 9dc5982e37 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！ヤキモチを通り越すくらいゆんゆさんにドキドキしてもらえるような作品にしたいと思います(笑)これからもよろしくお願いします！ (2019年5月26日 21時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆ(プロフ) - いつも更新を楽しみにしています。まるたーの私なので、上手くいって欲しいと思う反面、感情がリアルに伝わるってくるので、上手くいったらヤキモチ妬きそうで今から心構えを、なんて思ってしまいます(笑)これからも楽しみにしています！ (2019年5月26日 19時) (レス) id: e91edee03b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» ご感想ありがとうございます！プロだなんて嬉しすぎます(><)更新頑張ります！！ (2019年5月23日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2019年5月3日 15時
