◇22 ページ22
＊＊＊
夕飯どうしよう･･････。
調味料しか入っていない空っぽの冷蔵庫の中を眺め、私は溜め息をつく。
コンビニ弁当で済ませるか、頑張って買い出しに行くか───。
すると、ベッドの上に放っていた仕事用のケータイが鳴った。
『はい、Aです』
(お世話になります。ジャニーズ事務所の田中です)
『･･････お世話になります』
お前か！せっかくの休日に何の用だ！
電話の相手は、ジャニーズ事務所の忌まわしきあの男だった。
(今日、お休みだそうですね？会社に電話をかけたらそう言われましたよ)
『ええ、労働基準法に乗っ取り取得した貴重な休みですけど？』
(なるほど、それは丁度良かった)
いやいや、何も良さそうじゃないよ。
いったいどんな無茶な依頼をされるのか、私はビクビクとしながら言葉の続きを待った。
(今日の19時、時間空けておいてください。まあ、事前に言わなくともAさんなら空いてるでしょうけど)
『失礼ですね。私だって予定くらいありますよ』
(そうなんですか？)
『まあ、今日の話ではないですけど』
(ああ、だと思いました)
人を小バカにするような胡散臭い笑い声が、電話の向こうから聞こえてくる。
握った拳を手近なクッションにめり込ませながら、私はどうにか気持ちを落ち着かせる。
『というか、今回は雑用頼まれても行きませんよ？』
(誰もそんな事言ってませんが)
『え？違うんですか？』
(以前、寿司が食べたいと言ってたじゃないですか)
その言葉に、私は暫し考え込んだ。
以前？そんな事言っただろうか？
私は遠い記憶を遡り、そして思い出した。
『･･･それ、1年前の話ですよね？』
確か去年の今頃、楽器運搬の雑用を頼まれた時に、そんなような事を言った覚えがある。
(今日なら少し時間が取れそうなので、来てください。あ、嫌なら無理にとは言いませんが)
『何を仰いますか。じゃあ、今日の19時に銀座集合ですね？承知しました』
(ははは、相変わらず冗談ばっかり言う人ですね。乃木坂集合に決まってるでしょう。あなたに銀座の寿司なんて一生早いですよ)
それは生まれ変われって意味か。
しかも乃木坂となると、単純に向こうの事務所の近くで済ませたいだけなのだろう。
しかし、これで今日の夕飯は決定だ。
癇に障る部分は多々あったが、私は広い心で了承をして電話を切った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 549人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめこ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編作成中ですので少しお待ちください！ (2019年6月6日 12時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
りな - 本当におもしろいです！早く続き見たいです！ (2019年6月5日 23時) (レス) id: 9dc5982e37 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！ヤキモチを通り越すくらいゆんゆさんにドキドキしてもらえるような作品にしたいと思います(笑)これからもよろしくお願いします！ (2019年5月26日 21時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆ(プロフ) - いつも更新を楽しみにしています。まるたーの私なので、上手くいって欲しいと思う反面、感情がリアルに伝わるってくるので、上手くいったらヤキモチ妬きそうで今から心構えを、なんて思ってしまいます(笑)これからも楽しみにしています！ (2019年5月26日 19時) (レス) id: e91edee03b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» ご感想ありがとうございます！プロだなんて嬉しすぎます(><)更新頑張ります！！ (2019年5月23日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2019年5月3日 15時
