◇1(丸山side) ページ1
｢───おぅ、マルおかえり。ちゃんとクリーニング代渡せたん？｣
足取り重くスタジオに戻ると、横山君に声をかけられた。
それに対し、俺は首を横に振る。
｢いらんて言われて、受け取ってもらえへんかった･･･｣
｢あ〜、まあAちゃんなら言いそうやな｣
ドンマイ、と肩を叩かれる。
自分のせいで、彼女にコーヒーをかけてしまった。
挙げ句、心配して近寄ろうとしたら｢触らないで｣と拒絶までされ、完全に嫌われてしまったのだ。
そして同時に、俺は心を決めた。
これ以上、彼女を傷つけないようにしようと。
もう彼女に関わるのはやめよう、と───。
自分から、身を引く事にしたんだ。
"俺、アホやし器用な方でもないからさ、結局空回りしてんねん"
───いつだって、君を喜ばせたくて、守ってあげたくて、たったそれだけなのに、結果はいつも君を苦しめてるんだ。
"Aちゃんともっと仲良うなりたいって思ってても、全然うまくいかへん"
───叶わない、実らない恋なのだと、まざまざと見せつけられるようで、心が押し潰されそうなんだ。
"───だから、もう･･････"
───さようなら、俺の大好きな人。
最後に一度だけ、君に触れておきたかった。
でも、きっと俺にそんな資格はないから、何もできぬままその手を静かに引っ込めた。
これが、正解やろ───？
｢───田中さん｣
｢何でしょう？｣
｢これ、後で渡しといて？Aさん宛に｣
帰りの車中で、俺は運転中の田中マネの横に、茶封筒を置いた。
｢賄賂ですか？渡したところで歌の割り振り変わらないですよ？彼女にはその権限ないですから｣
｢その冗談、むっちゃおもんないですよ。クリーニング代です｣
本当は全部知っているくせに。性格の悪い事をするもんだ。
｢お預かりします｣
しかし、そんな俺の心すら見透かしているみたいに、田中マネは薄く笑みを浮かべて、その封筒をスーツの内ポケットにしまった。
｢このままご自宅でいいですか？それとも、どこか寄る予定あります？｣
｢真っ直ぐ家に行ってもらっていいです｣
つい、ふてぶてしい返答をしてしまった。
だが、田中マネは別段気にした様子もなく、｢わかりました｣とハンドルを切る。
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めめこ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編作成中ですので少しお待ちください！ (2019年6月6日 12時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
りな - 本当におもしろいです！早く続き見たいです！ (2019年6月5日 23時) (レス) id: 9dc5982e37 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！ヤキモチを通り越すくらいゆんゆさんにドキドキしてもらえるような作品にしたいと思います(笑)これからもよろしくお願いします！ (2019年5月26日 21時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆ(プロフ) - いつも更新を楽しみにしています。まるたーの私なので、上手くいって欲しいと思う反面、感情がリアルに伝わるってくるので、上手くいったらヤキモチ妬きそうで今から心構えを、なんて思ってしまいます(笑)これからも楽しみにしています！ (2019年5月26日 19時) (レス) id: e91edee03b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» ご感想ありがとうございます！プロだなんて嬉しすぎます(><)更新頑張ります！！ (2019年5月23日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2019年5月3日 15時
