■9(大倉side) ページ9
マルが立ち上がる気配がし、俺は慌てて室内に入ると、何食わぬ顔でキッチンにミネラルウォーターを取りに行く。
「おお、たちょ！帰ってたんか、おかえり」
「おん、丸ちゃんもお疲れ様」
慌ただしくリビングを駆けて行くマルに、俺も労いの言葉を返した。
すると、首からタオルを下げた風呂上がり姿の俺を、マルの視線がとらえていく。
そして、一瞬だけその表情が強張った。
「･･･あ、Aちゃんにもお水渡してあげて？」
しかし、すぐにいつもの笑顔を取り繕うと、マルはそう言ってタオルを取りにリビングを出ていった。
それから俺は、言われた通りにミネラルウォーターのペットボトルをもう1本手に取ると、それを毛布にくるまった彼女の前に差し出す。
「飲んどいた方がええで」
『っ･･･！？』
途端、ギョッとした様に目を大きく見開いた彼女と視線が合う。
すると、ただでさえ赤かった顔が、更に赤く染まっていくのがわかった。
『あっ･･･あの、さっきのは･･････！』
慌てふためくその姿に、思わず口角が上がってしまう。
マルではなく自分に向けられたその表情に、少なからず気分が良くなったのだ。
そして同時に、もう少しだけイジワルしたくなった。
俺は彼女の手を取ってペットボトルを持たせると、そのままAの両横に手をついた。
それから、真っ赤に火照る彼女の耳に唇を寄せると、小さく呟く。
「───えっち」
『なっ･･････！？』
部屋の外からバタバタとマルの足音が聞こえ、俺はスッとその場から立ち上がる。
潤んだ目でこちらを見上げる彼女の口が、パクパクと金魚の様に動いていた。
･･････アカンな。
彼女のその反応に、こちらの心臓も限界を迎えそうだった。
俺は踵を返すと、そそくさと階段を上がって、部屋に戻ってきたマルと彼女のやり取りに耳を傾ける。
「───Aちゃーん！大丈夫か･･･って！あ！また岩戸閉まってもうた！！」
『違います！違うんです〜･･･！』
あの言葉を真に受けている辺りが、なんとも彼女らしい。
それがたまらなく可笑しくもあり、愛おしくもあって、俺は人知れずクスリと笑う。
そして自室に入ると同時に、俺はベッドへと倒れ込んだ。
ひとつ息を大きく吸うと、胸が軋むように甘く痛む。
「───顔、あっつ･･･」
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
