■24(大倉side) ページ24
＊＊＊
「はぁ〜、あっつ･･･」
冷蔵庫から取り出した缶ビールのプルトップを開けると、プシュッと小気味のよい音が鳴った。
そしてそれを、風呂上がりの火照った体に流し込む。
健康面から考えると、あまり良い行いではないのだろう。
だが、その背徳感も相まってか、この瞬間のビールの味は、また格別なものがある。
最近は雨の日も段々と少なくなり、夜には涼しい風の中に夏の匂いを感じるようにもなった。
次の季節が目前までやってきているのを実感する。
そしてそれは、この生活が残り半分となる事も同時に示していた。
初めはあんなに早く抜け出したいと思っていたのに、ほんの数ヶ月の間で、その気持ちはいつの間にかどこかへ行ってしまった。
まあ、無謀にも近い"この気持ち"を終わらせてやるには、ちょうど良いのかもしれないが───。
「あ･･･」
すると、サンルームのベンチに華奢な人影を見つけた。
その後ろ姿だけで、Aだとすぐに気付く。
「何してんねやろ」
俺は冷蔵庫から缶ビールをもう一本取り出すと、そのままサンルームへと向かった。
少しビックリさせてやるか。
そんな小学生みたいなイタズラ心と共に、気付かれぬようそっとサンルームの引戸を開ける。
『───出す、出さない、出す、出さない･･･』
そして、戸を引く手が止まった。
『出す、出さない･･･出す･･･』
蚊の鳴くような声と悲痛な面持ちで、彼女は手元の花から花弁を一枚ずつ引っこ抜いていた。
初めは花の剪定でもしていたのだろう。
足元に置かれた剪定バサミと、数本の花を見つけて、俺はそう思った。
しかし、いつからこんな絶望の牢獄のような空間に突入したんだろうか･･･。
俺は襟足をポリポリと掻いて、小さく溜息をつく。
それから、足音を立てぬようこっそりと中へ入ると、花占いに夢中になっているAの頬へ、冷えた缶ビールをあてがった。
『ひゃっ･･･！？』
案の定、Aは跳び上がって驚くと、目をまん丸にしてこちらを見上げた。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
