■18(丸山side) ページ18
彼女はふわりと優しい笑みを浮かべ、こちらに手を伸ばすと、そのまま俺の髪をくしゃりと撫でていった。
『───おやすみなさい』
「っ･･･！」
しかし、ただその言葉だけを放つと、彼女はまた瞳を閉じて寝息を立て始めてしまった。
彼女が触れていった髪を自分でも押さえると、途端に頬へ熱が集中していくのがわかった。
「もう･･･」
何もなかったかのように穏やかな表情で眠る彼女に、少し恨めしく視線を送る。
「ほんまに、変な子やな───」
───初めて出会ったあの時から。
それから俺は深く息を吐くと、ソファの背もたれに掛けてあったブランケットに手を伸ばした。
そしてそれを彼女にそっと掛けると、そのままソファに頬杖をつき、その寝顔へ視線を落とす。
彼女の顔にさらりと掛かった長い髪の毛を指先でどけると、くすぐったそうに身じろいでいた。
「･･･結局、聞けへんかったな。あの日の事」
あの日───彼女が顔を真っ赤にさせて騒いでいた日。
大倉と何かあったのは間違いないだろう。
大倉自身はいつも通り何食わぬ顔をしていたが、彼女がこぼした言葉や状況から考えるに、風呂場で何かしら起きたに違いない。
けれど、それを俺が詮索していいものなのだろうかという躊躇もあった。
ガラス細工の様に繊細で穢れなく、そして下手に踏み込めば一瞬のうちに脆く崩れてしまいそうな、そんな印象が彼女にはある。
手に取ってみたいけれど、触れた瞬間に壊してしまいそうで、そわそわともどかしい気持ちを抱えながら眺める事しかできない。
そんな不思議な感覚。
でもきっと、俺は不器用やから───。
「壊してまうんやろうな･･･」
だから、少し離れた場所から優しく見守る事しかできない。
けれど、もしこれが大倉だったら、もっと上手く立ち回るんだろうか。
俺は溜め息と共に、再びソファへ突っ伏すと、彼女の柔らかな髪に手を伸ばし、そのままくしゃりと撫でた。
「おやすみなさい」
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
