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『あ･･･すみません。気付きませんで･･･』
玄関が開く音どころか、彼がリビングルームへ入ってきた事にすら気付かなかった。
大倉さんの件、私には余程重症のようだ。
「また」
『え？』
「また、さっきと同じ顔してんで？そろそろ俺の質問にも答えて欲しいんやけどな〜」
『す、すみませ───フフ』
丸山さんはわざと口を尖らせ拗ねた表情を浮かべると、まるで子供がダダをこねるように体を左右に揺らしていた。
その様子に、私はつい笑い声を漏らしてしまった。
「フフ。で、どないしたん？このお酒」
そう言いながら丸山さんは私の隣に並ぶと、ダイニングテーブルに手をついて、箱の中のお酒を覗き込んだ。
『実家から届いたんです』
「ご実家？」
『はい。実家が新潟で酒屋をやってまして。それで、定期的にこうやって送ってきてくれるんです』
「え〜！Aちゃんのお家って酒屋さんなんや！ここへ来てAちゃんの新情報が出てきたな！」
私には眩し過ぎるくらいの笑顔で、丸山さんは楽しそうに言った。
しかし一方の私は、まともな愛想笑いすら浮かべられなかった。
『でも、とても一人では飲みきれなくて･･････少し困ってもいるんですけどね』
それに、こうして実家から物が届く度に、私の心が無言の圧力に萎縮していく。
「───それってさ、」
すると、丸山さんの声色がワントーン下がり、妖艶に細められた瞳が私へと向けられた。
「Aちゃんからお誘いもらってるって、解釈してもええの？」
『え･･･？』
丸山、さん───？
「いえーい！酒盛りや〜！」
『丸山さんは、どれから飲みますか？』
「うわ〜、どうしよう。こんだけ並んでると逆に決めるん大変やなぁ･･･」
正座した丸山さんは渋い表情で腕を組み、目の前のローテーブルにズラリと並べられた酒瓶にじっくりと目を通していた。
その無邪気な横顔に、私は人知れずホッと胸を撫で下ろす。
"Aちゃんからお誘いもらってるって、解釈してもええの？"
あんなに色っぽく言われたもんだから、恥ずかしながらついあらぬ意味で考えてしまった。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
