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『よいせっ───』
玄関の鍵を開けると、私はクッションの入った袋を抱えながら、そのままリビングルームへと向かった。
まだ昼過ぎだというのに、この天候のせいで室内は夕方のように薄暗い。
しかし、空調の効いた室内は、じっとりと湿っぽい外に比べたら、はるかに心地が良かった。
すると、ソファの方からもぞもぞと何かが動く気配がした。
電気も点いていなかったから、てっきり誰も居ないのだと思っていたが、もしや丸山さんだろうか？
私は足音を立てぬよう注意を払いながら、そっとソファへ近付いた。
『･･････寝ちゃってる？』
案の定、そこに居たのは丸山さんだった。
部屋着だろうか。ラフな出で立ちでソファに寝転がり、僅かな光も遮るように、目の上に腕を載せている。
丸山さんの規則正しい呼吸音だけが、静かな部屋に響いていた。
私はテレビ横のチェストからブランケットを引っ張り出すと、それを優しく彼に掛ける。
そしてソファの前に膝を着き、ほんの少しの間だけ、この人の寝顔を眺めた。
グレーのトレーナーの首元が、ダルダルによれている。
その庶民的な一面に、少しの親近感と安心感を覚えた。
それから私は、起こさないようその襟元へ手を伸ばすと、そっと丸山さんの首元を直した。
『───えっ』
そんな間抜けな声が漏れたのは、その手を引っ込めようとした時だった。
少し汗ばんだ温かい手が、私の手首を捕まえている。
咄嗟に丸山さんへ目を向けると、載せていた腕が僅かにどかされ、その奥から覗く視線と目が合った。
『すみません、起こしてしまいましたね･･･』
しかし、丸山さんからの反応はない。
その雰囲気も、いつもの明るく柔らかい感じとは違い、男性的で、どこか官能的な色気をはらんでいる。
『丸山さん･･････？』
「───おかえりなさい。大倉とお出掛けやったん？」
やっと返ってきた丸山さんの声は、とても静かで少し掠れていた。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
