□37 ページ37
"あいつ、ホンマはめっちゃええヤツやねんで？"
いつだったか、丸山さんが言っていた言葉を思い出す。
当時はそんな片鱗など全く見られなかったから、本当だろうかと不安であったが、今目の前にいる彼を見て、大いに理解した。
気不味そうに時折襟足の毛を弄りながら、大人しく私の反応を待っている。
ベッド脇に膝をついて、私の目線に合わせるように大きな体を丸めている様は、どこか愛らしさすら感じてしまった。
ついこぼれそうになる笑みを、私は掛け布団で隠す。
『───もう、大丈夫です。良かったです』
まだほんの少しかもしれないけれど、大倉さんとの心の距離が縮められて。
『鍵、見つかって』
良かった───。
「フッ･･････人の事より、自分の心配しとき」
すると、大倉さんは一瞬だけクシャッとした笑みを浮かべ、次に私の額を軽く叩いた。
思わず目を瞑ると、また目の前でクスクスと笑い声が上がる。
大倉さんて、本当はこんなに笑う人だったんだ･･･。
この短い間に、いくつもの大倉さんの魅力が見えてきて、恐れながらファンの人の気持ちがわかった気がした。
すると、大倉さんは口元に笑みを残したまま、静かに立ち上がった。
「じゃあ、なんか作ってくるから、それまで大人しく寝ときや？」
『え、大倉さんが、ですか？』
「当たり前やん。他に誰がおんねん。少しでも何か胃に入れた方がええし、薬も飲まなアカンしな」
まさかあの大倉さんが、私の為に食事を用意してくれるだなんて───感激の嵐である。
『あ、でも･･････薬、常備してたかな･･･？』
久しく風邪なんて引く事もなかったし、そもそもこの家に救急箱があるのかどうかすら知らない。
しかし大倉さんは、さして気にした様子もなく、ふーんと気のない返事を寄越した。
そして、ふと私の額に大きな手をピタリと当てると、「冷感シートみたいなんもあった方がええか」と呟く。
その真剣な眼差しに、私の鼓動がどんどん早くなっていく。
それを意識したら、途端に目のやり場にも困ってしまった。
どんな顔をしていたら良いのかもわからなくなり、私は引っ張り上げた掛け布団に顔をうずめる。
『･･････ありがとうございます』
すると、布団越しに彼の手が肩に置かれた。
「少し待っててな───」
囁くような優しい声。
その声は、心臓のドキドキと共に、微かな眠気をも連れてくる───。
どうかこれが、夢ではない事を強く願う。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 177人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめこ(プロフ) - 匿名さん» 癒やしだなんて･･･！こちらこそ、ありがとうございます！ (2022年4月3日 8時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 夜な夜な作品読ませていただいています、日々の癒やしです、ありがとうございます！ (2022年3月30日 2時) (レス) @page45 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - みーこさん» まさにうちキュンに影響された作品です(笑)引き続き応援よろしくお願いします！ (2022年2月21日 22時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - うちキュンですね♡何か本当に頭の中にこのストーリーの映像が浮かびます(^^)応援しております！ (2022年2月20日 23時) (レス) @page24 id: bdc8ba7bac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2022年2月11日 20時
