□31(大倉side) ページ31
「───Aちゃんの事、ちゃんと知りたいって思うキッカケがあったから」
「は･･･？」
「そのキッカケを拾うんも捨てるんも、全部お前次第やで？なんやったら、自分から行かへん限り、もうAちゃんからは来てくれへんかも」
「なんやそれ･･･」
「まだ謝れてへんねやろ？」
「･･････」
マルが言わんとする事は、なんとなくわかる。
普段はお調子者でアホと思っていても、こういう所は2つ歳上なのだと思い知らされる。
「───味噌汁は後で自分でやるから、そのままでええわ」
俺はマルの言葉に何も言い返せず、それだけ言葉を残すと、荷物を抱えて自分の部屋へと戻った。
視界の端で彼女が慌てて顔を背けるのが見えて、何とも形容し難い痛みが胸を掠めた。
かっこ悪･･･。
深夜にリビングのソファに身を委ね、まるでこの感傷に酔いしれるみたいにワインをチビチビと飲んでいた。
もう彼女に拒絶され始めている自分には、声を掛けるキッカケやチャンスすら無いのかもしれない。
そう考えたら、ますます気分は落ち込むばかりだ。
溜息と共に目を閉じると、酔いのせいかフワフワと体が揺れているような感覚に陥る。
それはやがて眠気へと変わっていき、気付けば意識の半分以上が眠りの世界へと向かっていた。
『───寒くないのかな･･･？』
すると、混濁する意識の中で、彼女の声が鼓膜を揺らした。
呟いただけの小さな声。
けれど、小鈴を鳴らしたような彼女のその声に、俺の意識は確実に浮上していた。
それから、ふわりと優しい空気の流れが全身を撫でていき、柔らかな温もりが俺を包んだ。
薄っすらと目を開けると、霞んだ視界に彼女の姿を見つける。
"キッカケを拾うんも捨てるんも、全部お前次第やで？"
ふと、脳内にマルの言葉が反覆した。
そして気付けば、俺は彼女の手首を掴んでいた。
手首、ほっそ･･･。
『あ、の･･････』
しかし、彼女の表情は不安そうに曇っていて、今にも泣いてしまいそうに目が潤んでいた。
その光景に、自分がここまで彼女を傷付けてしまっていたのだと、勝手ながら己の胸が軋む。
そして俺は、掴んでいた彼女の手首を強く引いた。
『え、わっ･･･！？』
目をまん丸にして、足をバタつかせながら必死に体勢を立て直そうとする彼女の姿に、俺の口元がつい緩む。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 180人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめこ(プロフ) - 匿名さん» 癒やしだなんて･･･！こちらこそ、ありがとうございます！ (2022年4月3日 8時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 夜な夜な作品読ませていただいています、日々の癒やしです、ありがとうございます！ (2022年3月30日 2時) (レス) @page45 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - みーこさん» まさにうちキュンに影響された作品です(笑)引き続き応援よろしくお願いします！ (2022年2月21日 22時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - うちキュンですね♡何か本当に頭の中にこのストーリーの映像が浮かびます(^^)応援しております！ (2022年2月20日 23時) (レス) @page24 id: bdc8ba7bac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2022年2月11日 20時
