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「べつにいいよ。でもその代わり、おれと戦ってよ」
空閑くんは不敵に笑ってそう返した。どうやらあの小南が私を評価していたからか、実力が気になるらしい。
好戦的なその目は、私を訓練室に引き摺り込む太刀川さんの目と似ていて、また笑ってしまう。今日は笑ってばかりだ。
『構わないよ。ただし、5本勝負でお願いする』
「わかった。しおりちゃんたちに伝えてくる!」
嬉しそうに宇佐美達の元へ向かった空閑くん。弟がいたらこんな感じか、と思うと、ブラコンとシスコンを両立させる嵐山さんの気持ちがわかった気がした。
「すまないな、粟倉」
『いいよ、私も空閑くんと戦ってみたいし。それに、勝ち負けは関係無くとも、誰かと戦えるのは楽しいからね』
レプリカ先生が感謝する、と述べて空閑くんを追いかけていった。扉の向こうから小南の声が聞こえて、みんなの笑い声が聞こえる。
玉狛はやはり、あたたかいところだ。ここならきっと、彼が生きる目的や楽しさを得られる。
その協力が少しでもできたらいいな、なんて考えながら訓練室に向かうと、眼前で扉が勢いよく開いた。
「ちょっと粟倉!遊真と勝負するってどういうこと!?」
『いやー、小南から一本もぎ取る実力を見てみたくてね』
「後であたしともやりなさいよ!」
『むり』
「なんでよ!!」と激昂する小南を引き摺って訓練室に入ると、もうすでに宇佐美が準備をしていた。
「いつでも準備おっけーだよ」
『ありがと、宇佐美。ここのトリガー借りるね』
いくつか並んだトリガーの中から、スコーピオンを選ぶと、宇佐美は不思議そうに首をかしげた。
「いいの?」
『空閑くんは見たところ攻撃手でしょ?私は新人の攻撃手相手に一対一(タイマン)で射手用トリガーをぶっぱするような鬼畜じゃないよ』
太刀川さんなら遠慮はいらないが、彼はボーダーのトリガーを使ってまだ一日も経っていない。別に嘗めているわけではないが、私が変化弾(バイパー)なんて使ってしまえば、勝負は秒で終わってしまう。
彼の実力を見るためにも、同じ攻撃手として戦うのが手っ取り早い、ということを理解したらしい宇佐美は、玉狛のトリガーを使うことを了承してくれた。
「先輩はスコーピオンを使うのか?」
『サブに入れているよ。メインを使ったら射程的に勝負にならないから、今日はこれで勘弁してね』
遠回しに早くここまで上ってこい、という思いが伝わったのか、空閑くんは楽しそうに笑った。
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海道蓮(プロフ) - 紅羽さん» ご指摘とコメントありがとうございます!楽しみにしていただけて何よりです(´∀`)これからもこの作品をよろしくお願いします! (2022年7月22日 0時) (レス) id: abb6677f28 (このIDを非表示/違反報告)
紅羽(プロフ) - 初めまして。防衛任務からの2、3話ほど、古寺が小寺になっていましたよ!気になってしまったので指摘させていただきました。お話とても面白かったです!次の更新を楽しみにしています! (2022年7月20日 22時) (レス) id: 9cf5eca61b (このIDを非表示/違反報告)
海道蓮(プロフ) - ななちさん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってごめんなさい!やっと現実の方が落ち着いたので、どんどん更新したいと思います!これからもこの作品をよろしくお願いします! (2021年2月27日 2時) (レス) id: 3f508cdd1a (このIDを非表示/違反報告)
ななち(プロフ) - 思わず一気読みするぐらいすごく面白かったです。主人公ちゃんの性格も好きだし、台本読みでもなく文も読みやすい。丁寧な描写で読んでいて引き込まれました。これからも更新頑張ってください (2021年2月16日 0時) (レス) id: e6a7dee876 (このIDを非表示/違反報告)
海道蓮(プロフ) - 碧さん» ありがとうございます!!なるべくたくさん更新できるように頑張りますので、これからもこの作品をよろしくお願いします! (2021年1月24日 7時) (レス) id: 3f508cdd1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海道蓮 | 作成日時:2021年1月10日 0時